2008 Fiscal Year Annual Research Report
非侵襲的脳機能計測法を用いたヒトの静的、動的表情認知過程に関する研究
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19700253
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
三木 研作 National Institute for Physiological Sciences, 統合生理研究系, 特任助教 (10442534)
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Keywords | 顔認知 / 表情 / 脳波 / 発達 / 仮現運動 / 上側頭溝 |
Research Abstract |
本年度は、表情変化を伴う顔の動きに関しての脳波を用いた実験を行った。2枚連続画像を提示することにより被験者が動きを知覚することができる仮現運動刺激を用い、実際の顔写真を提示し、以下の4条件にて健常成人を被験者として誘発脳波を計測した。 (1) N→H条件 : 表情のない顔から笑った顔に変化する。(2)H→N条件 : (1)の逆。 (3) N→A条件 : 表情のない顔から怒った顔に変化する。(4)A→N条件 : (3)の逆。 4条件ともに左側頭部の電極であるT5、T5'(T5の2cm下方)、右側頭部の電極であるT6、T6'(T6の2cm下方)に、刺激提示後約160〜190ミリ秒後に明瞭な一相性の陰性波が誘発された。陰性波の最大振幅において、T6、T6'電極で、N-H条件は他の3条件に比べ、有意に大きくなっていた。また、N-H条件で、T6、T6'電極(右側頭部)での最大振幅は、T5、T5'電極(左側頭部)に比べ、有意に大きくなっていたが、他の条件では電極間に有意な差は認められなかった。 今回の結果より、表情変化を伴う顔の動きに関して、笑った表情が表出される際に右側頭部の脳活動が有意におおきくなったことから以下のことが推測される。(1)健常成人では、笑った表情が表出されるような顔の動きの検出に長けている可能性が示唆され、これには、今までの研究で視線の認知や表情の認知に関連すると考えられている側頭部にある上側頭部の活動が影響していると考えている。(2)右側頭部の方が、左側頭部に比べ活動が有意に大きかったことから、表情を伴う顔の動きの認知では、右半球の働きより重要である可能性が示唆された。 これらの実験により、献上成人における表情を伴う顔の動きの検出パターンが明らかとなった。この刺激方法を用いて、小児における表情認知に関する発達の過程や表情の検出が苦手な自閉症などの疾患の病態解明を簡便に行える可能性が高まった。
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Research Products
(9 results)