Research Abstract |
本研究目的は,不完全観測を伴うCox型計数過程モデルの統計的推測の基盤を整備するために,生じる3タイプの部分尤度:(a)周辺部分尤度,(b)双子の疑似部分尤度,(c)セミパラメトリック・プロフィール尤度に対する,統一的かつ普遍的な科学的見解を得ることである. このような目的のもとで,本年度では,まず,Cox型治癒混合モデルの推測における(a)の経路積分型の部分尤度(極限では無限次元積分形式になる)に対して,Fredholm行列式と部分和過程の収束結果を用いて,積分のLaplace近似が適用可能であることを示し,その結果,(c)のプロフィール尤度と漸近的に同等であることを導き,(a)の最大化に基づく回帰パラメータの推定量に関する漸近理論を構築した.また,このようなLaplace近似を用いて,(a)に基づく潜在ハザードの経路積分型の推定量が,(c)により定式化される潜在ハザード推定量と漸近的に同等であることを示した. 一方,2重中途打ち切りデータのNPMLE(ノンパラメトリック最尤推定量)の推測において,(b)と(c)の統合に向けて,まず(c)のスコア関数に注目し,そこに内在する前進と後退のマルチンゲール構造を定式化した.その結果,NPMLEの極限分布がある前進と後退のGaussianマルチンゲール過程の重ね合わせ和の分布になることを導いた.ここでの定式化のために,3重対角化行列の逆行列に関する二三の性質が重要なキーであったため,それらの性質の数理構造を,独立した研究として纏めた. 上記の研究で定式化した3重対角化行列の逆行列の性質を用いて,Cox型治癒混合モデルにおける推定生存時間関数の分散公式および信頼区間構成法を与える方法として,従来の計算不可能になる無限次元行列形式を避け,大標本でも計算可能な微分形式に基づく分散公式を研究した.
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