2008 Fiscal Year Annual Research Report
計算科学・生化学的手法を用いたEGFレセプター高親和性人工リガンドの分子設計
Project/Area Number |
19700278
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
末永 敦 The Institute of Physical and Chemical Research, 高速分子シミュレーション研究チーム, 基幹研究所研究員 (90415191)
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Keywords | 分子シミュレーション / 分子設計 / 細胞内情報伝達 |
Research Abstract |
上皮増殖因子(EGF)レセプターに対して、天然EGF分子よりも高親和性を持つ人工EGF分子を計算科学的手法を用いて設計し、その効果を生化学的手法を用いて確認した。EGFレセプターとEGFの結合は、細胞内情報伝達系を起動させ、かつ癌と密接な関係があることが知られているため、天然EGFと拮抗する人工EGFはEGFレセプターの活性阻害剤として用いられることが期待されている。このような分子の設計は、従来試行錯誤的な突然変異体構築実験によって行われていたが、本研究では計算科学的手法を用いた網羅的な検索により効率的に人工EGF分子の候補を得ることが出来た。具体的には、天然EGFに対して、可能な全ての1アミノ酸変異体を計算機上で構築し、その構造平衡化分子シミュレーション、さらにはEGFレセプターとの結合親和性予測計算を行った。そのような計算科学的手法により得られた人工EGF分子の候補とEGFレセプターとの結合を、実際に生化学的実敬(一分子蛍光分析)により確認することで、目的の人工EGFの分子設計に成功した。本研究は1アミノ酸変異EGFであったため、天然EGFよりもわずかに高親和性の人工EGF分子のみが設計されたが、今後多重変異EGFに発展させることでより強力な人工EGFの分子が設計可能であると期待される。本研究は、計算科学的手法と生化学的手法の両面的アプローチの有用性を示し、また、細胞内情報伝達ネットワーク解明のみならず癌治療薬開発に大きく貢献することが期待される。
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Research Products
(2 results)