2007 Fiscal Year Annual Research Report
リハビリテーションにおける神経回路再生プロセスに関する理論的研究
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19700281
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
久保田 繁 Yamagata University, 大学院・理工学研究科, 助教 (60396588)
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Keywords | NMDA受容体 / GABA受容体 / シナプス可塑性 / シナプス競合 / 神経回路形成 / 神経回路再生 |
Research Abstract |
本年度の研究では、神経回路損傷後の回復能力が高い発達期に注目し、シナプス伝達に関わる複数の遺伝子発現の変化が、回路形成に与える影響に関して理論的検討を行った。興奮性神経伝達物質受容体であるNMDA受容体のNR2B(NR2A)サブユニット発現の減少(増加)が、シナプス可塑性に与える影響について、スパイン内カルシウムダイナミクスに基づく可塑性モデルを用いて解析した結果、この遺伝子発現が、スパイクタイミング依存シナプス可塑性において主に長期増強を抑制する方向に作用することを明らかにした。また、このシナプス可塑性の変化が、生後間もなくの未発達なシナプス間の競合を促進することで、発達期の神経回路組織化にも大きく貢献していることを示した。さらに、NMDA受容体のサブユニット発現変化と、抑制性神経伝達物質受容体であるGABA受容体の発現の相互作用が、シナプス間の競合プロセスに与える影響に関して解析を行った結果、前者がシナプス間の競合を強めて、強いシナプスの割合を減らすのに対し、後者がシナプス間の競合を緩めて、強いシナプスを増加させるのに貢献するというように、これらの協調した発現によって、シナプヌ競合が適切に制御されることを示した。これらの結果は、発達期のシナプス回路形成が、、神経伝達に関わる複数の遺伝子発現の適切な協調制御を必要としていることを示している。さらに、神経回路損傷後に中枢神経系で起きる、同様の遺伝子発現の変化が、シナプス間競合プロセスの制御を通じて回路再生プロセスを調整する可能性を示唆しているという点でも重要である。
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