2008 Fiscal Year Annual Research Report
リハビリテーションにおける神経回路再生プロセスに関する理論的研究
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19700281
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
久保田 繁 Yamagata University, 大学院・理工学研究科, 助教 (60396588)
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Keywords | 神経科学 / 遺伝子発現 / シミュレーション工学 / シナプス可塑性 / 神経回路自己組織化 / 神経回路再生 / NMDA受容体 / GABA受容体 |
Research Abstract |
本年度の研究では、シナプス伝達に関与する遺伝子の発現が、神経回路再生に及ぼす役割を検討するため、興奮性神経伝達物質受容体であるNMDA受容体のサブユニット(NR2A及びNR2B)の発現と、抑制性神経伝達物質であるGABA(およびその受容体)に関連した遺伝子発現が、時空間的相関構造を有するシナプス入力の可塑的変化を制御するメカニズムを解析した。シナプス後神経細胞の活動レベルが、NMDA受容体電流の機能的特性を動的に調節するフィードバックの影響を導入した皮質錐体細胞のシミュレーションでは、シナプスの長期増強と減弱のバランスが動的に維持されると共に、これらの遺伝子発現パターンの変化に伴って、シナプス増強と減弱の相対比の時間平均が連続的に調節できることを示した。また、神経活動に依存したシナプス学習のフィードバックを強化することで、互いに独立な相関を有する複数の入力グループ間の競合関係が誘発されることや、この競合のレベルがGABA抑制レベルと共に比例的に増加することも明らかにした。さらに、シナプス入力群の相関の時間スケールと、受容体発現パターンとを同時に変化させることで、相関を有する入力群がシナプスを強化するか抑制するかという、シナプス学習の基本的な方向性を反転できることを示した。これらの結果は、興奮性及び抑制性シナプス伝達に関わる遺伝子発現の複合的な作用が、シナプス競合を通じて、神経回路の組織化を動的に制御できることを示唆しており、中枢神経回路の再生プロセスを本質的に理解する上で重要である。
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