2007 Fiscal Year Annual Research Report
脳の同期回路形成としての計算論モデルと人被験者実験の複合解析
Project/Area Number |
19700283
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 直行 The Institute of Physical and Chemical Research, 創発知能ダイナミクス研究チーム, 研究員 (70312668)
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Keywords | 海馬 / 記憶想起 / 階層的ネットワーク / 物-場所連合記憶 / 脳波 / 眼球運動 / 位相コード |
Research Abstract |
本研究の目的は、人の記憶想起のダイナミクスを計算論モデルと人被験者実験の複合解析により明らかにすることである。私たちは、海馬における位相コードによって海馬の物-場所連合記憶を階層的な記憶ネットワークとしてリアルタイムに貯蔵できることを示し、さらに人被験者実験による理論検証も行ってきた。しかし、位相コードで得られる階層的な記憶ネットワークが、想起においてどのように役立つかについては十分に明らかでなかった。平成19年度は、研究計画のとおり、階層的な記憶ネットワークの想起ダイナミクスの理論的な検討を行った。結果として、階層的記憶ネットワークは選択的な記憶想起を行うのに適したネットワーク構造であることを明らかにした。すなわち、広い空間受容野を持つユニットを刺激すると、複数の物一場所連合記憶を時間コードとして想起することができ、一方、狭い空間受容野を持つユニットを刺激すると、単一の物-場所連合を正確に想起することができることがわかった。このような選択的想起の性質は、一般の連合記憶ネットワークとは異なる性質であり、膨大な記憶を管理する海馬にとって特に必要な性質であると考えられる。以上の結果の一部は、国内学会(Neuro2007)などで発表した。平成20年度においては、計算理論から予見される想起ダイナミクスを、人被験者実験のデータとの複合解析を用いて検討する計画であり、今年度はその準備として脳波計測における脈波や呼吸などの低周波アーチファクトの検討を始めた。
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