2008 Fiscal Year Annual Research Report
制御できない学習という観点からの薬物中毒 : 前頭前野におけるドーパミンの役割
Project/Area Number |
19700309
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
アダム ワイテマイヤー The Institute of Physical and Chemical Research, Murphy研究ユニット, 研究員 (70419878)
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Keywords | ドーパミン / セロトニン / マイクロダイアリシス / 鎮静剤 / 報酬 / マウス / 側座核 |
Research Abstract |
本プロジェクトの目的は、中脳辺縁系ドーパミン神経活動がどのように依存性薬物による条件づけ行動の獲得や遂行に閑与するのか検討することにある。 条件付け場所嗜好試験とマイクロダイアリシス法の組み合わせにより, モルヒネとナロキソンによる条件付け場所嗜好、場所嫌悪反応を獲得する際の側坐核ドーパミン、セロトニン活動の可塑的変化と条件付け場所嗜好の想起(発現)との関係を検討した。また、条件付け場所嗜好、場所嫌悪反応が発現する際のドーパミン神経系の活動も検討した。その結果、場所嗜好試験の条件付け時にモルヒネを繰り返し投与すると、モルヒネによる中脳辺縁系の反応(モルヒネによる側坐核内ドーパミン、セロトニン量の増加)は投与を繰り返すことによって継続的に高まって行くということ、そしてこの繰り返し投与による中脳辺縁系反応の上昇率とモルヒネ条件付け場所嗜好量との間に正の相関があることを見いだした。このことは場所嗜好行動が中脳辺縁系の感作によって規定されることを示している。また、モルヒネ場所嗜好反応の発現(想起)中にはドーパミン量は対照群と比較して変化しないが、ナロキソン場所嫌悪反応の発現(想起)中にはドーパミン量が上昇という知見も得た(補足であるが、モルヒネ投与はドーパミン遊離を促進するが、ナロキソン投与はそのような作用を有していない)。加えて、側坐核ドーパミンとモルヒネ場所嗜好性の間に負の相関関係が存在した。 これらの結果は以下を示唆する。(1)依存性薬物により誘発された中脳辺縁系ドーパミンシステムにおける神経適応は薬物探索行動に強く関係している。(2)薬物探索行動の発現に側坐核のドーパミンの重要性は高くはない。(3)ドーパミン量が高い場合には、負の情動に動機づけられた行動(場所嫌悪反応)と関係があるのかもしれない。以上の結果は動的なドーパミンとセロトニンの相互作用と学習済み行動の発現(想起)の間に関係性が存在することを示している。
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Research Products
(3 results)