2007 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質の持続的神経活動における異なる種類の抑制性神経細胞の機能分担に関する研究
Project/Area Number |
19700310
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森田 賢治 The Institute of Physical and Chemical Research, 甘利研究ユニット, 基礎科学特別研究員 (60446531)
|
Keywords | 大脳皮質 / 持続的神経活動 / ワーキングメモリー / 抑制性神経細胞 / 樹状突起 / 非線型 / 理論神経科学 / ニューラルネットワーク |
Research Abstract |
短期記憶(ワーキングメモリー)の実体と考えられている大脳皮質神経細胞の持続的活動に関して、特に異なる種類の抑制性神経細胞の機能に焦点を当てて、理論的アプローチ、及び電気生理学実験を一部組み合わせて研究を行ってきた。一つには、錐体細胞樹状突起分枝においてdendritic spikeの発生に基く非線型な入力加算が行われるという最近の知見を踏まえ、そうした非線型性が、短期記憶の神経回路全体の特性にどのように影響するか、理論的研究を行ってきた。数理モデルを構築し、シミュレーション及び数理解析によって、樹状突起の非線型性が、短期記憶の安定性や正確さに寄与しうることを示した。さらに、空間ワーキングメモリーの回路として提案されている構造に基いた、より具体的なモデルを構築し、樹状突起の非線型性、および最近実証された、樹状突起投射性の抑制性細胞(Martinotti細胞など)を介したフィードバック抑制によって、正確な位置記憶が形成されるメカニズムを提案した。 また、持続的神経活動の生成維持に必須な、細胞間の抑制性および興奮性のフィードバック入力の特性について、理論的方法論を電気生理学と組み合わせて研究を行った。具体的には、持続的活動中に錐体細胞が受けるフィードバック・シナプス入力を、細胞の発火タイミングの実データから理論的に推定・再構成し、得られた波形を実際の錐体細胞に入力して、出力を測定した。入力と出力が一致する条件を探索した結果、錐体細胞は、細胞体投射性の抑制性細胞(fast spiking細胞)から時間遅れが少なくγ振動成分の大きな強い入力を受けていると考えられることが明らかとなり、それが持続的活動の維持に関わることが示唆された。また、その機能的意義についての検討を行っている。
|