2007 Fiscal Year Annual Research Report
海馬の広域情報処理機構の解明と脳深部刺激法への応用
Project/Area Number |
19700318
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神野 尚三 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 講師 (10325524)
|
Keywords | 海馬 / トレーサー実験 / 投射型 GABA ニューロン / 電気痙?療法 / ミクログリア / アストロサイト / 点過程解析 |
Research Abstract |
1. 海馬の広域神経回路網についてのトレーサー実験 マウスの海馬、そして海馬の投射路に関係していると想定される領域について、定位脳手術により、トレーサーを注入し、未同定の投射型GABAニューロンによる広域神経回路網の検索を行った。結果の一部はJournal of Neuroscience誌に発表し、現在も解析は継続中である。 2. 海馬のGLIA細胞の三次元分布様式に関する解析 近年の研究により、グリア細胞がニューロンの活動性の制御に大きな役割を果たしていることが明らかになっている。このため、海馬のミクログリアとアストロサイトの分布様式について、三次元点過程解析を行い、新たな知見を得た。また本結果はGLIA誌に発表した。 3. 本研究課題の目的の一つは、精神疾患の新たな治療法の構造的基盤を確立することである。その一環として、うつ病の治療に現在用いられている電気痙攣療法によるグリア細胞の形態学的変化についての解析を行った。実験にはマウスを使用し、急性刺激(1回の電気痙攣刺激)もしくは慢性刺激(1日1回の電気痙攣刺激、連続8日間)を与えた後に、IbalとSIOOβにより、それぞれミクログリアとアストロサイトを同定し、突起の長さ、細胞体の空間分布密度の定量を行った。これにより、急性刺激では、24時間後にミクログリアの突起の有意な退縮が生じるが、1カ月後には回復すること、慢性刺激では、突起の退縮が1カ月後にも持続することを明らかにした。ミクログリアの空間分布密度は電気痙攣刺激による変化は認められなかった。アストロサイトについては、突起の長さ、空間分布密度のいずれにも変化は認められなかった。これらから、電気痙攣療法によるミクログリアの形態学的変化が海馬のニューロンの活動性を調節し、抗うつ作用に関係している可能性が示唆された。本結果はExperimental Neurology誌に投稿中である。
|