2007 Fiscal Year Annual Research Report
心因性勃起障害を引き起こす脳・脊髄内神経回路網の変化とその分子基盤
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19700319
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
坂本 浩隆 Kyoto Prefectural University of Medicine, 医学研究科, 助教 (20363971)
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Keywords | ストレス / 心因性勃起障害 / 神経解剖 / PTSD / うつ病 / 腰髄 / ガストリン放出ペプチド / ラット |
Research Abstract |
ガストリン放出ペプチド(GRP)は29アミノ酸からなる神経ペプチドで、中枢神経に広く分布し、概日リズム、摂食行動、情動反応など、多くの生理現象に関与することが知られている。一方、雄性性機能を司る神経ネットワークは、脳と脊髄の多くの部位から構成される。ラット腰髄を局所破壊すると反射性勃起が消失することから、腰髄には雄性性機能に重要な中継核が存在することが知られているが、その分子・神経基盤についてはいまだ不明な点が多い。本研究では、雄性性機能を司る神経ネットワークを明らかにする目的で、ラット腰髄におけるGRPおよびGRP受容体(GRP-R)の発現とその機能解析をおこなった。その結果、雄の腰髄L3-4レベルのX層に存在するGRPニューロンは、射精や勃起の起始核とされる仙髄副交感神経核および球海綿体脊髄核にまで投射していた。また、これら全ての投射核にはGRPに対する高親和性結合能およびGRP-Rの発現と局在を認めた。GRPのこれらのニューロン作動および受容体系は雌ではほとんど認められず、雄性優位な性的二型を示した。機能型アンドロゲン受容体を欠く突然変異体である精巣性女性化症候群モデル(tfm)の雄ラットでは、その表現型が完全に雌化されることから、GRP系の性分化はアンドロゲン依存的であることが示唆された。成熟雄の精巣を摘除し、GRPアゴニストを腹腔内投与したところ、反射性勃起の回数と自発的に起こる射精反射の発現率が濃度依存的に増加した。さらに、成熟雄のクモ膜下腔にGRPアンタゴニストを局所投与すると、反射性勃起と射精反射が有位に減衰した。以上の結果、腰髄に存在するGRP系は脊髄内神経回路を構築し、自律神経系と骨盤筋を同時に制御することにより、勃起、射精などの雄性性機能を調節しているものと考えられた。
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Research Products
(11 results)