Research Abstract |
細胞内で蛋白分解を担うオートファジーのメカニズムには未解明の部分が多く,特に筋組織での研究はほとんど進んでいない。オートファジー異常を原因とする疾患群「自己貪食空胞性ミオパチー(AVM)」の代表疾患Danon病を中心に研究することで,AVMの疾患概念の確立と,筋組織でのオートファジーの解明さらに普遍的なオートファジーの解明を目指す。本年度は,AVM患者の生検筋を用いて,自己貪食空胞の組織化学的・免疫組織化学的検討を行い筋病理学的に評価した。併せて,そして,リソソーム・エンドソーム経路およびオートファジー機構に関与する物質の局在について筋病理学的検討を行った。組織学的および免疫組織学的解析より,オートファゴソームを筋鞘膜の性質を有する膜で囲んだ特異な自己貪食空胞を認めた。筋組織ではLAMP-2欠損と,LAMP-1,LIMP-1,LIMP-2の発現亢進を認めた。オートファゴソーム膜蛋白LC3,リソソーム蛋白cathepsin,エンドソーム膜蛋白Rab5,VAMP-7,Transferrin receptor,LDL receptor も軽度亢進していた。一方,ユビキチン,19Sおよび20Sプロテアソームの発現に明らかな亢進は認めなかった。今回の研究結果から,Danon病では,蓄積性の変化である自己貪食空胞の筋線維内での増加に加えて,オートファジー/リソソーム系,エンドソーム系の機能亢進が著明であり,筋変性との関連が示唆された。今後,患者とLAMP-2ノックアウトマウスの筋組織を用いて,免疫電顕的解析として筋鞘膜蛋白,リソソーム系蛋白の局在について観察および解析を行って,AVMの病態の全容解明と骨格筋における蛋白分解システムとしてのリソソーム・エンドソーム経路におけるオートファジー機構の解明を目指す。
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