Research Abstract |
「研究の目的」に基づきEph-FGFR複合体の下流シグナル分子との相互作用を詳しく調べた結果,以下の研究成果を得た。 (1)「GEF(guanine nucleotide exchange factor)であるephexinは,EphA4の下流分子であるがFGFRに直接結合することで作用を受ける」という先の研究結果を起点に,ephexinの変異体を用いてFGFRによるTyrリン酸化部位を特定し,そのリン酸化ephexinのRhoファミリーGTPaseへの作用を調べた。その結果,FGFRを介したephexinの活性化がRho familyのうち,RhoAのみの活性を増強することを発見した。これは神経細胞の伸展における反発作用を示唆するが,神経様モデル細胞であるPC12を用いた変異体発現実験において,RhoAの活性化から予期できる形態変化が観察された。(JBC vol.282:31103-12, 2007)。 (2)タイプA,Bで計16クラス存在するEphファミリーのうち,ヒト脳cDNAライブラリーより得られたEph(EphAl,A2,A3,A4,A5,A7,B4)と,FGFR1-4との結合を293T細胞での強制発現系で調べたところ,それぞれ異なる親和性で結合することが分かった。さらに不活性型変異体EphA4存在下では,その他のEphの各FGFRへの結合が阻害される組合わせが存在することを発見し,結合ドメインに相違があることが示唆された。 これらの研究成果にて,Eph-FGFR複合体によるシグナル伝達が,細胞の増殖に作用するだけでなく細胞の遊走や形態変化にも関与していることがわかり,さらに分化・増殖過程において,この複合体が複雑な多様性を秘めているということが示唆されることより,幹細胞研究の観点から非常に重要であると考えられる。
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