2007 Fiscal Year Annual Research Report
候補遺伝子DISC1の機能解析を通じた精神疾患の病態理解
Project/Area Number |
19700347
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
久保 健一郎 Keio University, 医学部, 助教 (20348791)
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Keywords | DISC1 / 脳内皮質構造 / 中枢神経系 / 発生 / 精神疾患 / 子宮内電気穿孔法 |
Research Abstract |
スコットランドの精神疾患多発家系の遺伝学的研究で発見されたdisrupted in schizophrenia 1 (DISC1)は、その後の解析の結果、コードする蛋白質が大脳皮質構造形成に関わる可能性が示唆され、世界的な注目を集めている。本研究では、脳内皮質構造の中でも大脳以外の皮質構造を中心に、発生のそれぞれの過程において、どのような組織構築の異常がDISC1の機能欠失によって起こるのかを明らかにすることを試みた。siRNA発現ベクターおよびDISC1の変異体遺伝子発現ベクターを作成し、子宮内電気穿孔法を用いてこれらを発生中の中枢神経系に導入した。その結果、脳内皮質構造の発生過程に置いて、DISC1が重要な役割を持っている事が判明した。統合失調症の成因についての仮説として、発達段階での脳の異常が、その後の統合失調症ならびに関連した精神疾患に罹患する危険性を増すとする発達障害仮説があるが、これまではどのような分子異常に基づいて形態・組織構築の異常が起こるのか不明であった。本研究においてDISC1のsiRNA発現ベクターを発生中脳内皮質に導入すると、siRNA発現ベクターの強さに応じた神経細胞移動の遅れを認めた。また、dominant negative効果を持つDISC1変異体の導入によっても、同様の神経細胞移動の遅れを認めた。本研究の結果を考え併せると、DISC1などの発生段階で重要な役割を果たす遺伝子の変異や発現量の異常により微細な構造異常が発生し、それがその後の発症の基盤となる可能性が考えられた。
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