2008 Fiscal Year Annual Research Report
拡散を介した小脳異種シナプス抑制においてペリシナプス性制御機構が担う役割
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19700350
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
佐竹 伸一郎 National Institute for Physiological Sciences, 生体情報研究系, 助教 (30360340)
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Keywords | プルキンエ細胞 / バーグマングリア / 介在ニューロン / 登上線維 / グルタミン酸輸送体 / 拡散 / スライスパッチクランプ法 / 長期増強 |
Research Abstract |
これまでに、下オリーブ核から小脳への登上線維からシナプス間隙外に拡散した興奮性神経伝達物質(グルタミン酸と推定)が、(1)介在ニューロン-プルキンエ細胞間のGABA作動性シナプス伝達を抑制すること、ならびに(2)このGABA伝達抑制がAMPA型グルタミン酸受容体で仲介されるシナプス前性機構により引き起こされていることを報告した。スライスパッチクランプ法により、拡散を介した小脳異種シナプス抑制においてグルタミン酸輸送体が担う役割について検討した。 【1. ニューロン型グルタミン酸輸送体の長期増強が異種シナプス抑制におよぼす影響】 昨年、小脳異種シナプス抑制には、プルキンエ細胞特異的に発現するグルタミン輸送体EAAT4に依存した、逆行性制御機構が存在することを示唆する結果を得た。この逆行性制御の分子的背景を追究するため、プルキンエ細胞で誘発したグルタミン酸輸送体増強が異種シナプス抑制におよぼす影響を観察した。登上線維の高頻度刺激(5Hz、30秒)に伴い、プルキンエ細胞において(1)AMPA受容体電流の長期抑圧と(2)グルタミン酸輸送体電流(synaptic transporter current)の長期増強が同時に惹起された。一方、異種シナプス抑制は、輸送体増強の誘発とともに顕著に減弱した。プルキンエ細胞のグルタミン酸輸送体は、細胞外の余剰グルタミン酸を回収する役割のみならず、シナプス活動に依存して回収機能を変化させることにより、伝達物質の拡散過程に影響をおよぼすシナプス可塑性制御因子としての役割も担っていると考えられる。 【2. エタノールの異種シナプス抑制阻害作用】 小脳異種シナプス抑制は、エタノールにより用量依存的(25〜100mM)に阻害されることを見出した。しかし、エタノール(50mM)は、登上線維のシナプス小胞放出確率ならびに放出多重性に有意な影響をおよぼさなかった。また、AMPA灌流投与に伴う介在ニューロンのGABA放出抑制にも無効であった。エタノールの異種シナプス抑制阻害作用は、登上線維の伝達物質放出過程や前シナプス性AMPA受容体の阻害などではなく、登上線維伝達物質がシナプス間隙から介在ニューロン終末に拡散する過程の阻害により惹起されたことを強く示唆している。
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