2008 Fiscal Year Annual Research Report
ラット脊髄後角の痛覚伝達制御におけるプロテアーゼ受容体とTRPチャネルの相互作用
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19700358
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤田 亜美 Saga University, 医学部, 助教 (70336139)
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Keywords | PAR / TRP / ホールセル・パッチクランプ / EPSC / ラット / 膠様質 / 痛覚情報伝達 / トロンビン |
Research Abstract |
皮膚末梢から中枢へ至る痛覚情報伝達の制御に重要な役割をもつ脊髄後角第II層(膠様質)ニューロンにおいて、プロテアーゼ受容体の一つであるPAR-1の活性化ペプチドSFLLRNやTFLLR、内因性活性化プロテアーゼトロンビンは、グルタミン酸作動性の自発性興奮性シナプス後電流(sEPSC)の振幅を変化させずに発生頻度を増加させることを申請者らは見い出している。さらに、これらのPAR-1アゴニストによるsEPSCの発生頻度の増加がPAR-1アンタゴニストペプチドYFLLRNPによって阻害されたことから、sEPSCの発生頻度の増加、すなわちグルタミン酸放出の促進、はPAR-1活性化を介したものであることを明らかにしている。本研究では、このPAR-1活性化による興奮性シナプス伝達の促進作用をより詳細に解析するために、成熟雄性SDラットから作製した後根付き脊髄横断スライス標本の膠様質ニューロンにブラインド・ホールセル・パッチクランプ法を適用し、保持膜電位-70mVでの膜電流を記録して検討した。後根の電気刺激により発生させた単シナプス性の一次求心性感覚神経刺激誘起興奮性シナプス後電流(eEPSC)に対するPAR-1アゴニストの作用を検討したところ、Aδ線維、C線維のどちらの神経線維を電気刺激しても、eEPSCの振幅は変化しなかった。このことから、PAR-1活性化によるグルタミン酸放出の増加は一次求心性感覚神経の中枢端におけるものではないことが明らかとなり、したがってグルタミン酸作動性介在ニューロンの末端におけるものである可能性が示唆された。今後、この可能性についてさらに検討を加える。シナプス前終末からのグルタミン酸放出の促進は膠様質ニューロンの膜興奮性を増加させることから、以上で明らかになったPAR-1活性化は末梢から中枢への痛覚情報伝達の促進に関与していることが考えられる。
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