2007 Fiscal Year Annual Research Report
逆行性シグナル伝達の発現と機能調節を担う神経終末における分子基盤の解明
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19700362
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
前島 隆司 National Institute for Physiological Sciences, 発達生理学研究系, 助教 (70399319)
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Keywords | 逆行性シグナル伝達 / 内因性カンナビノイド / カンナビノイド受容体 / シナプス可塑性 / 小脳 |
Research Abstract |
近年、神経細胞間のシナプス部において内因性カンナビノイドが逆行性シグナル分子として働くことが見出された。シナプス後細胞における内因性カンナビノイドの放出誘導機構については多くの知見がもたらされてきたが、シナプス前終末におけるそのシグナル伝達機構については未解決の部分が残されている。(1)カンナビノイド受容体(CB1受容体)から下流のシグナル伝達経路、(2)内因性カンナビノイドの分解・取り込み機構、(3)逆行性シグナル伝達の可塑性(CB1受容体の数または質的変化、内因性カンナビノイド分解・取り込み機構の変化)。本年度は(1)の課題に関連して、CB1受容体の活性化で誘導される伝達物質放出の長期的な抑圧作用(CB1-LTD)について実験を行った。小脳皮質における平行線維→プルキンエ細胞間シナプスでは伝達物質の放出増強によるプレ型の長期増強現象(LTP)が報告されている。そこでこれに対する逆方向の可塑性としてプレ型のLTDがCB1受容体の活性化に依存して生じるか検証した。小脳スライス標本を用いて、プルキンエ細胞から電気生理学的に平行線維シナプス電流を記録した。フォルスコリンを数分間投与してプレ型LTPを誘導した後、CB1受容体アゴニストを数分間投与したところ、シナプス伝達が持続的に抑圧された。この抑圧は、CB1受容体のアンタゴニストで一部回復したものの、依然として残存し、Paired-pulse振幅比の変化も伴っていた。以上のことから平行線維シナプスにおいてプレ型LTPの脱増強作用がCB1受容体の活性化によって引き起こされることが示唆された。平行線維シナプスのプレ型LTPはプロテインキナーゼA(PKA)によるRIMlaのリン酸化により誘導されることが報告されているため、CB1受容体の下流にはアデニル酸シクラーゼ(AC)などのPKA-RIMla経路を修飾するシグナル伝達機構が存在すると考えられる。
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