2008 Fiscal Year Annual Research Report
カニクイザル胚性幹細胞のコロニーの構造とその特性に関する研究
Project/Area Number |
19700377
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Research Institution | National Institute of Biomedical Innovation |
Principal Investigator |
岡田 浩典 National Institute of Biomedical Innovation, 霊長類医科学研究センター, 研究員 (80416271)
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Keywords | カニクイザル / ES細胞 / FGF2 / 神経系細胞 / ニューロン / レチノイン酸 / 分化誘導 / PGc |
Research Abstract |
医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターで繁殖育成されたカニクイザルを実験に使用した。カニクイザルより卵および精子を採取し、顕微授精により受精卵を作出し、胚盤胞まで発育培養したのちES細胞を樹立した。このES細胞を本研究に使用した。ES細胞は種ごと、あるいは細胞株ごとに異なった特性をもっていることが知られている。 今回用いたカニクイザルのES細胞は、扁平状のコロニーを形成し、継代のときに単一細胞にするとコロニーが形成しないというものであった。また、培養時にFGF2の添加を必要としないことが証明された。FGF2はフィーダー細胞から分泌している可能性があるが、少なくともこのES細胞はFGF2低依存性であることが判明した。 この株を用いて神経細胞への分化誘導を試みたところ、レチノイン酸単独で神経系細胞に分化することがわかった。しかし、分化した神経系細胞はニューロンのみであり、他の神経系細胞は認められなかった。レチノイン酸暴露により神経幹細胞にまず分化したと予測され、その神経幹細胞がニューロン選択的に再度分化したと考えられる。 このES細胞は、FGF2の添加を必要とせず、レチノイン酸の添加のみという極めてシンプルな実験系によりニューロンを選択的に分化誘導できるものである。シンプルな実験系を用いる利点は多く、神経系細胞分化の様式等を解析するうえで有用な細胞株であると考えられた。 また、関連実験として始原生殖細胞(PGc)の単離培養実験を行ってきた。カニクイザルのPGcに関する研究により、平成19年度、日本生殖医学会学術奨励賞を受賞した。
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