2008 Fiscal Year Annual Research Report
心肥大のエネルギー消費機構とカルシウム動態の経日的解析
Project/Area Number |
19700385
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
三澤 裕美 Nara Medical University, 医学部, 教務職員 (50281275)
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Keywords | 生態情報・計測 / エナジェテクス / 心筋スライス / 心筋細胞内Ca^<2+>動態 |
Research Abstract |
本年度は、心筋スライス標本を用いて、心筋収縮時の環境を変えながらカルシウムトランジェント計測を実施した。まず、ラット摘出心標本を用いて、心拍数を増加させたときに観察される、心筋収縮力低下の原因を探るため、心筋スライス標本を用いた心筋細胞内カルシウム動態観察を行った。刺激頻度を増加させてもカルシウムトランジェントの高さに有意さは無かったが、その持続時間は有意に短縮する傾向を示した。これらの知見から、心拍数の増大に伴うラット心筋収縮力の低下は、心筋線維と心筋細胞内に放出されたカルシウムとの相互作用時間の短縮が一つの原因であることが示唆された。しかし、心拍数の増加に伴う心筋細胞内液のpH低下や、トロポニンIやCタンパクのリン酸化レベルの変化もし指されており、その点についての検討を加えているところである。 低酸素灌流時の左心室圧低下について前負荷が及ぼす影響について解析を行った。正常酸素灌流時には前負荷の増大に伴い左心室発生圧は有意な増大傾向を示し、Frank-Starlingの法則が成り立つことを確認した。一方、低酸素灌流時では、前負荷が低いときには正常酸素灌流時と同じ程度の左心室発生圧とクロスブリッジの形成が認められたが、前負荷が増大すると左心室発生圧は低下した。心筋スライス標本を用いた心筋細胞内カルシウム動態観察では、前負荷を増大させることはできないものの、カルシウムトランジェントの高さには有意差はないものの、持続時間は有意に延長していることが観察された。これは、心筋線維とカルシウムの作用時間の延長を示すが、一方で心筋線維のカルシウム感受性の低下により、細胞質カルシウム濃度の高値が遷延している可能性もある。実際、低酸素環境下では無酸素環境下とは異なり細胞質pHの低下はそれほど強いとはいえず、それに伴うカルシウム感受性の変化も強くはないと考えられた。
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