Research Abstract |
厚年労働省の統計によると,日本の三大死因は悪性新生物(癌),心疾患,脳血管疾患である。特に,癌による死亡数は年々増加傾向にあり,癌治療技術の発展は急務である。その中で,女性においては乳癌の羅患率が最も高いことから,児島は乳癌治療のための新規材料を作製する。乳癌の治療では,多くの場合,乳房を切除するという外科的処置を行う。しかし,女性にとって乳房の損失は精神的に大きな苦痛を伴うため,可能な限り乳房温存に努めると共に,シリコンや生理食塩水バッグなどによる乳房の復元が行われている。また,乳癌細胞は転移性が高く,予後の悪さと相関していることが知られている 乳房温存と癌の再発は同義の関係にあるので,乳癌の治療においては手術と薬物療法の併用が効果的となる。そこで,本研究では,乳癌細胞を標的とした新しいドラッグデリバリーシステム(DDS)を提案する。 まず薬物運搬体の合成をおこなう。アミノ基に対する反応性を有するポリエチレングリコール(PEG)と,Boc-Glu(OBzl)(Boc基で保護したグルタミン酸-γ-ベンジルエステル)を結合させたデンドリマーを合成した。次に,アルカリ処理によってベンジルエステルを加水分解した後,抗がん剤であるアドリアマイシン(ADR)をヒドラジド結合によってデンドリマーに結合させた。ヒドラジド結合は酸性条件下では切断されるため,本薬物運搬デンドリマーはpHの変化に応答した薬物放出制御が可能である。得られた薬物運搬デンドリマーはNMR,GPCなどによって同定した。また,ADRの結合量は吸光度測定やHPLCなどによって算出しか。得られた薬物結合デンドリマーの細胞毒性を検討した。
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