Research Abstract |
目的:本研究では,除神経筋への電気刺激が神経筋機能に及ぼす影響について,筋萎縮,興奮収縮連関および軸索終末再生の観点から検討した。方法:7週齢のWistar系雄ラットを用い,麻酔下で坐骨神経を凍結損傷させた後,電気刺激を行わない群(NES群)と,下腿前面に電気刺激を行う群(ES群)に分類した。電気刺激は,周波数10Hz,電流を4,8,16mAの3種類の条件に設定し,1日1回30分間,週6日の頻度で合計3週間実施した。電気刺激終了後に前脛骨筋を摘出し,重量を計測した後,RT-PCR法にてInsulin-like growth factor(IGF)-1,2のmRNAの発現量を計測した。また,電子顕微鏡を用いて神経筋接合部(NMJ)及び横行小管(T管)の観察を行った。結果:相対的筋重量およびIGF-1mRNAの発現量は刺激強度に依存して増加したことから,除神経筋に対する電気刺激は刺激強度に依存して筋萎縮を抑制することが示唆された。除神経によってT管の構造様式は著しく乱れることが知られているが,NES群,ES-16mA群に比較して,ES-4mA,ES-8mA群では乱れたT管の回復が促進される傾向が認められた。除神経に対する低〜中強度の電気刺激は,興奮収縮連関の機能回復を促進する可能性が示唆された。NMJの微細構造では,軸索終末がES-4mA群で50%,ES-8mA群で30%程度観察されたのに対して,NES群,ES-16mA群では全てのNMJにおいて軸索終末が観察されなかった。つまり低〜中強度の電気刺激は軸索終末の形態を維持するように働くものの,刺激強度がある閾値を超えると,逆に軸索終末の再生を抑制する可能性が示唆された。従って,除神経筋に対する電気刺激は,目的とする機能改善によって刺激強度を選択的に設定する必要があると考えられる。
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