Research Abstract |
【目的】平成19年度の報告において, 我々は, ギプス固定期間中に熱刺激を行うと, ギプス固定後の再荷重で起こるラットヒラメ筋の筋傷害が抑えられること, ならびにその作用機序にHeat Shock Protein(HSP)70の発現が関与していることを報告した, しかし, 平成19年度の報告では, 再荷重後3日目までしか検討しておらず, その後の経過については不明であった. そこで本年度は, 再荷重後の経過をさらに延長し, プレコンディショニングとしての熱刺激が筋傷害の発生におよぼす影響を検討した. 【方法】ラットを通常飼育の群と通常飼育にて熱刺激のみを行う群, 両側足関節を4週間ギプス固定する実験群に振り分け, 実験群はさらにギプス固定終了の2日前に熱刺激を行い, 固定期間終了後に再荷重を開始する群と熱刺激は行わず同様に再荷重を開始する群に分けた. 検索時期は再荷重開始から0, 1, 3, 5, 7日目とし, ヒラメ筋を材料にHsp70含有量と壊死線維の発生頻度, ならびに筋線維横断面積の分布状況を比較した. 【結果および考察】ギプス固定後の再荷重で起こる筋傷害は, 再荷重から3日目に最も顕著となり, その後の経過は回復する傾向にあった. 一方, 再荷重開始の2日前に熱刺激を行うと, 再荷重開始時のラットヒラメ筋内にHsp70が発現し, 再荷重から3日目の筋傷害が軽減されることを確認した. しかし, その後の経過をみると, 再荷重から5日目や7日目に, 新たな筋障害の発生が認められた. このことから, ギプス固定後の再荷重前に行う, 1度の熱刺激だけでは, 再荷重後に繰り返し与えられる伸張負荷などのストレスに対する, 長期的な筋傷害の予防効果は得られない可能性が考えられた. 今後は, 臨床応用に向けて, 定期的に複数回の熱刺激を行った場合の筋傷害に与える影響について検討し, 筋傷害の予防効果を長期的に得られる熱刺激の実施頻度について明らかとする必要があると考える.
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