2007 Fiscal Year Annual Research Report
受動歩行における皮質脊髄路の促通の解明と脊髄損傷者の歩行訓練への応用
Project/Area Number |
19700460
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Research Institution | Research Institute, National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
上林 清孝 Research Institute, National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities, 運動機能系障害研究部, 流動研究員 (70415363)
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Keywords | 脊髄損傷 / リハビリテーション / 経頭蓋磁気刺激 / 歩行訓練 / Lokomat / 皮質脊髄路 / 歩行補助装置 / 神経生理学 |
Research Abstract |
脊髄不全損傷者では免荷式歩行訓練を行うことによって歩行再獲得の可能性が高まるものとされ,訓練機器としてロボティクスを応用した免荷式動力型歩行補助装置(Lokomat)が開発されている。この訓練装置では動力アシストによって随意努力なしに歩行様のステッピングが可能となるが,そのような受動歩行時における神経調節機序に関してはいまだ不明な点が多い。そこで本年度は,Lokomatによる受動歩行で生じる感覚入力が下肢筋への皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響について,健常者にて立脚後期・遊脚初期・遊脚後期の3つの歩行位相で検討した。皮質脊髄路の興奮性に関しては,経頭蓋磁気刺激(TMS)によって下肢領域の運動野を磁気刺激することで下肢筋群に運動誘発電位(MEP)を誘発し,刺激強度を段階的に変化させることで入力(刺激強度)-出力(MEP振幅)関係から評価した。受動歩行時に大腿直筋,大腿二頭筋,前脛骨筋では筋活動が生じていなかったが,大腿直筋では遊脚初期に,大腿二頭筋では立脚後期および遊脚後期に,前脛骨筋では遊脚初期・後期に入出力関係の傾き増加が観察され,皮質脊髄路の興奮性増大が推察された。さらに,受動歩行において荷重に関連した感覚入力の影響を検討したところ,荷重が加わった際には前脛骨筋でのみ特異的にMEP振幅の増大がみられた。以上のように,随意的な努力を行っていない受動ステッピング時にも,皮質脊髄路の興奮性は感覚入力によって歩行位相に依存して変化していることが明らかとなった。前脛骨筋は皮質との連結が強いとされ,歩行回復に対してもこの筋での機能回復が重要と考えられていることから,脊髄損傷者の歩行訓練に際して荷重入力の重要性が示唆された。このような皮質脊髄路での促通現象の解明は歩行訓練プログラムの確立に有益な情報となりえるものと思われる。
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