2008 Fiscal Year Annual Research Report
受動歩行における皮質脊髄路の促通の解明と脊髄損傷者の歩行訓練への応用
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19700460
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上林 清孝 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 助教 (70415363)
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Keywords | 脊髄損傷 / リハビリテーション / 経頭蓋磁気刺激 / 歩行訓練 / Lokomat / 皮質脊髄路 / 歩行補助装置 / 神経生理学 |
Research Abstract |
昨年度は, 健常者における免荷式動力型歩行装置(Lokomat[○!R])による受動歩行時に, 経頭蓋磁気刺激(TMS)による入力[刺激強度]-出力[運動誘発電位(MEP)振幅]関係から下肢筋の皮質脊髄路興奮性を調べ, 歩行位相に依存した興奮性の変調を確認した。加えて, 前脛骨筋では, 荷重に関連した感覚入力によって, 皮質脊髄路の興奮性が高まることが示唆された。免荷量と歩行速度は脊髄損傷者の歩行訓練において重要な因子と考えられるため, 本年度は受動歩行における歩行速度の相違が皮質脊髄路の興奮性に影響するのか検証した。健常成人にて毎時1, 2, 3kmの3段階に設定した受動歩行中にTMSを与えたところ, 歩行位相に応じたMEP応答パターンは速度間でほぼ同様であったが, MEP振幅は速い速度で増加する傾向がみられた。この結果は, 増速に伴って末梢性の感覚入力が増加し, 皮質脊髄路の興奮性が高まったものと考えられる。また, 脊髄不全損傷者の受動歩行においても, 健常者と同様に歩行位相に依存したMEP振幅の変調が生じた。このように, 荷重の負荷や歩行速度の増加によって, 受動歩行においても皮質脊髄路興奮性の増大が引き起こされることから, 歩行訓練において訓練プログラムを患者の状態に応じて最適化することの重要性が示された。一方, 受動歩行中に経皮的電気刺激によってHoffmann反射をヒラメ筋や前脛骨筋に誘発した場合, 通常歩行時と同様に反射応答の低下がみられた。したがって, 受動歩行で生じる感覚入力は, 皮質脊髄路と単シナプス性脊髄反射経路に対して異なった効果を及ぼすこともまた明らかとなった。
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