2007 Fiscal Year Annual Research Report
「他者との身体的地盤を生成する体育」の理論的根拠に関する研究
Project/Area Number |
19700488
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
石垣 健二 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20331530)
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Keywords | 超越論的他者 / 身体的な「われわれ」 / 身体的に「わかる」 / 道徳教育 / 身体的経験 / 間身体性 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、他者との身体的地盤づくりを促進するための教科として「体育」を措定し、「自己-他者」間において身体的地盤が生成する理論的根拠を明らかにすることであった。 本年度前半は、体育における「教える-学ぶ」関係を検討しながら、そこで獲得されうる超越論的他者という視点を案出し、それが身体的な「われわれ」の基礎となる可能性を示した(論文:教科体育における「超越論的他者」の措定「体育学研究」)。このことは、身体運動の学習によって、個別的・具体的な他者をわかるだけでなく、より普遍的な他者についてわかるということだといえる。そこで重要なのは、他者を「わかる」ということが、言語的・説明的に「わかる」ことではなく、まさに身体的に「わかる」ということである。つまり身体性という次元において「われわれ」が成立するわけである。 このことを踏まえながら、本年度後半は、身体性と道徳性(心性)との関連に着目しながら、道徳的行為と身体性の問題がいかなる接点をもちうるかについて検討した(発表:道徳教育から身体教育(体育)へ,「体育・スポーツ哲学会」)。学習指導要領解説においても、「身体を通して学ぶ体育は、道徳教育そのもの」だという記述がある。しかし、どのようにして体育は、道徳教育たりうるのか。昨今の道徳教育論は、知的教育として「道徳的判断力」を育成し、そして、対話を重視しながら「道徳的実践意欲と態度」を育成し、さらに「心の教育」によって「道徳的心情」を育成しようと企図している。しかし、これらに決定的に不足するのは、実際の「経験」である。経験とは、心的な経験ではなく、直接的な身体的経験であり、実践へと繋がるような経験である。今後、こうした身体的経験の内実が何であるかを吟味する必要があるだろう。その内実が、身体的地盤(間身体性)であるならば、それが成立する構造を明らかにしなければならない。
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