2008 Fiscal Year Annual Research Report
「他者との身体的地盤を生成する体育」の理論的根拠に関する研究
Project/Area Number |
19700488
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
石垣 健二 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20331530)
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Keywords | 体育学 / 体育哲学 / 道徳教育(論)批判 / 身体的経験 / 身体的対話 / 超越論的他者 / 間身体性 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は, 他者との身体的地盤づくりを促進するための教科として「体育」を措定し自己-他者」間において身体的地盤が生成する理論的根拠を明らかにすることであった. 本年度前半の成果としては,原著論文 : 「『道徳教育として体育』序説-道徳教育(論)批判および身体的経験の必要性-」(審査有)が掲載されたことがあげられる. 自己と他者との間に身体的地盤が生成するためには, まず他者との友好関係が問題にされることとなる. というのも, 体育という教科は, 永らく道徳教育あるいは社会的態度の育成を目的として実施されてきた経緯があるからである. 本論文では, 道徳教育(論)を批判的に検討するなかで, 昨今の道徳教育が重視する心的経験よりも, むしろ体育においては身体的経験が必要になることを示した. しかし, ある経験が心的であるのか, 身体的であるのかはいかなる判断基準によって決定されるのだろうか. 身体的経験が「身体的」であるその根拠を明らかにしなくてはならない. 上述のことと関わり, 日本でおこなわれた国際スポーツ哲学会(IAPS)において,研究発表 : Bodily dialogue and intercorporeity in physical activityをおこなった. この発表は, スポーツが道徳教育(「われわれ」の拡大)に貢献するというプラグマティズムの見解を批判的に検討しながら, それらによって成立するのは心的な「われわれ」であり, 決して身体的な「われわれ」とはならないことを示した. そして自己と他者とが「身体的対話」をおこなうことによってのみ「身体的なわれわれ」が形成されること, そしてその「身体的」とはまさに「身体的感じkinesthetic feeling」を共有することであると論じた. また, 体育哲学分科会夏期研究会においても, 研究発表 : 「体育における『超越的他者』-超越論的他者となにが違うのか-」をおこなった. この発表は, 前年度の成果論文をより詳細に理論化するために「超越論的他者」と「超越的他者」を区別し, その差異を明らかにしようとしたものである.
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