Research Abstract |
(1) 本研究究課題の目的は,他者との身体的地盤づくりを促進するための教科として「体育」を措定し,「自己-他者」間において身体的地盤が生成する理論的根拠を明らかにすることである. (2) 上記の課題を達成するために,まず(1)哲学分野の著作について,主に現象学的身体論・現象学的他者論を参考にする必要がある(哲学関係図書の購入・文献複写).現象学が体育現象の説明に適していると思われるのは,それがその性格からして,心的現象以前の事象の解明にとり組む学問分野だからである.それら現象学の思想によって,身体という働きがいかにして人間の根源的部分を担っているかを検討し,それが道徳性という領域においてさえも関係するという着想を得る.また,(2)教育学・教育哲学の分野において,「学習規範論」や「自他関係論」を展開している研究を中心に文献の読解をおこない,教育という「教える-学ぶ」関係(他者との関係)において、そこで何が生じているのかそのメカニズムについて把握する必要がある(教育学・教育哲学関係図書の購入・文献複写).最近教育学の分野においては,発達論的立場からでなく,生成論的立場から学習者を理解する方法が提案されている.これは、段階的・システム的教育からの離脱とも捉えられ,特に身体的次元を媒介にしておこなわれる体育という現象を説明するためには,このような生成論が有効に適用されるものと思われる.さらには,(3)体育・スポーツ哲学の分野において今まで展開されてきた道徳論議や倫理学説を批判的に読み進め,それらの論議を整理するとともに,その限界を見定める必要がある(体育・スポーツ哲学関係図書の購入・文献複写).日本では「体育における人間形成論」が,そして,欧米においてはスポーツ教育論の思潮にのり,スポーツによるさまざまな道徳性の獲得が論じられてきたが,それらが単に希望的観測にすぎなかった事実を文献のなかから探ることとなる.これらの研究から、申請者が主張しようとする「身体的次元から道徳性に接近する」ための着想が得る. (3) 上記の文献考察をすすめながら,諸学会に参加・発表し,関係研究者に内容の是非を問うてゆく.
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