2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19700546
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Research Institution | Sapporo Otani University |
Principal Investigator |
林 貢一郎 Sapporo Otani University, 音楽学部, 専任講師 (90433474)
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Keywords | 音楽療法 / 動脈硬化 / ストレス |
Research Abstract |
音楽聴取や音楽療法がヒトの心身の状態に及ぼす影響に関する研究は、メンタルヘルスの改善、行動変容など心理的側面からの研究に端を発しており、医学・生理学的な研究手段を用いたものはいまだ発展途上であるといえる。本研究では、身体的状況にとらわれず, かつ比較的安価に実践することのできる動脈硬化予防手段としての「能動的音楽療法」の効果を明らかにすることを目的して, 3ヶ月間の能動的音楽療法の介入を行い, その効果を縦断的に検討した。今年度の本研究課題の作業仮説は以下の2点であった。1) 音楽療法の介入は高齢者の動脈硬化を改善するのか?2) 音楽療法による動脈硬化指数の改善は、血管内皮機能、自律神経系機能、ストレスホルモンといった動脈硬化指数に影響する因子の変動とリンクするのか? 今年度は, 15名の自立した生活を送る閉経後女性を対象として, 3ヶ月間の能動的音楽療法の介入を隔週で1回(1回60分程度)の頻度で行い(音楽療法群), その前後に動脈硬化指数を含む種々の生理的指標の測定を行った。また, 同年代の女性で, 音楽療法を実施しない群を(コントロール群)を設け, 同様の測定を行った。その結果, 音楽療法群では, 1) 動脈硬化指数(脈は伝播速度 ; baPW), 2) 拡張期血圧, 3) LDLコレステロールの明らかな低下が認められた。しかし, 血漿エンドセリン-1濃度(血管内皮機能の指標), 血漿ノルエピネフリン濃度(交感神経系の指標), 唾液中アミラーゼ活性(ストレスの生理的指標)は, 上述の動脈硬化指数や血圧の変化とリンクしなかった。コントロール群には, これらの変化は認められなかった。以上の結果は, 比較的短期間の音楽療法の実践は, 閉経後女性の動脈硬化指数やその関連因子の一部に好影響を及ぼす可能性が示唆された。今後, このメカニズムの解明が望まれる。
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