Research Abstract |
本研究は,1歳児数名を3年間にわたり縦断的に観察することを通して,対象となった幼児及びその幼児とかかわる幼児が,ままごと遊びにおいてどのようなスクリプトを表出し,さらにそのスクリプトを理解し,受け入れ,互いの共通概念としていくかについて,その過程を捉えることを目的としている。3年間の継続研究により,1歳代,2歳代,3歳代,各年齢時のスクリプトの共有の様相を捉え,幼児期のスクリプトの共有化過程を明らかにする。以上の研究により,自明のこととして共有されているスクリプトの共有化の過程を捉えることになり,生活文化が綿々と受け継がれ,広がっていくメカニズムについての資料を提供する。 継続研究最終年である平成21年度においては,下記のとおり,研究を実施した。 1.対象児の1歳代から3歳代までのままごと遊びにおける発話と行為を文字化したプロトコルと分割した動画ファイルを用いて,ターゲット児及びターゲット児とかかわる幼児のやりとりをスクリプトの共有の視点から詳細に分析した。その結果,1歳代の幼児は他児による「供する」を理解し,受け止めることが困難な場合があるものの,2歳を超えるころには,他児による「供する」行為に対する理解が深まること,「切る」とそれに用いられる道具に関する知識は,2歳を超えるころには共有されていること,年齢的発達に伴い,共有されているスクリプトを構成するスロット数が増加するとともに,「温度」「食物の確認」といつたサブスロットをも含めた豊かなスクリプトが共有されていくこと等が明らかになった。 2.1歳代から2歳代にかけてのままごと遊びにみられる幼児間のスクリプト共有過程に関するぶんせきについては,すでに文京学院大学人間学部研究紀要に掲載されている。また,1歳児に多くみられる「食べる」「飲む」行為とそれに関わるスクリプトの共有過程については,日本家政学会第63回大会において発表予定である。
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