Research Abstract |
チオヒダントインはイソチオシアナートを含む加工食品中にも存在することが明らかになっているが, 食品成分に由来するチオヒダントインの生理活性については, 抗変異原性以外に検討例がなかったことから, 今年度は, チオヒダントインの新たな生体調節機能を探索する目的で, 食後血糖値の上昇抑制作用, 血圧降下作用, 血中トリグリセライドの上昇抑制作用, 抗酸化作用の面から検討を行った。試験には, 食品中に見出されるイソチオシアナート(アリルイソチオシアナート, 3-ブテニルイソチオシアナート, 4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアナート)と各種アミノ酸から調製したもの(ATH-a. a, 3BTH-a. a, MTBTH-a. a)を用いた。 1)食後血糖値の上昇抑制作用を検討するため, α-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ活性阻害試験を行ったところ, いずれのチオヒダントインにも阻害活性は認められなかった。 2)血中トリグリセライドの上昇抑制作用を検討するため, リパーゼ活性阻害試験を行った結果, ATH-Thr, MTBTH-Leu, MTBTH-Phe, MTBTH-Trpに阻害活性が認められ, IC50値は80〜125μMであった。 3)血圧降下作用を検討するためACE活性阻害試験を行ったところ, ATH-Thr, ATH-Hisに阻害活性が認められた。 4)抗酸化性を検討するためABTSラジカル消去活性試験を行ったところ, グリシン, チロシン, トリプトファンから調製したチオヒダントインに特に強いラジカル消去活性が認められた。 また, オクタノールを用いる分配計数試験から各チオヒダントインの疎水性パラメータを求め, 上述の生理活性とチオヒダントインの構造との関連を検討したところ, リパーゼ活性阻害は分子全体の疎水性に依存する傾向がみられたが, ABTSラジカル消去活性はアミノ酸の構造に由来する部分が活性に影響を与えていることが示唆された。今後は, 他のイソチオシアナート由来のチオヒダントインを調製するなどして, それぞれの生理活性と複数の分子構造因子や物理的パラメータとの関係をさらに検討していく必要がある。
|