Research Abstract |
これまでに,カノーラ油を摂取した脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)では,高血圧関連疾患の進行促進と,心臓および腎臓での炎症が認められることを報告している.そこで本研究では,生活習慣病疾患モデルの一つであるSHRSPにカノーラ油を摂取させ,血圧調節に関わる器官である腎臓に対する影響のメカニズムを解明することを目的とした.実験では,無脂肪精製粉末飼料に10%カノーラ油または大豆油(対照)を添加し,SHRSPおよび正常血圧Wistar-Kyoto(WKY)ラットに6週間摂取させた.同条件で摂取させた動物を用いた前年度の実験では,両系統ともカノーラ油群で血漿脂質濃度が上昇した一方,腎臓の病理組織学的所見には,WKYラットでは両群間に差が認められなかったのに対し,SHRSPのカノーラ油群では糸球体硬化,細動脈壁肥厚,好塩基性尿細管が観察され,腎膀糸球体装置のmacula densa細胞でのCOX-2発現増大,e-NOSタンパク発現誘導が認められた.今年度は,酸化ストレスの関与を検討するため,酸化ストレスマーカーを測定したところ,両系統のカノーラ油群で,非酵素的脂質酸化依存性の酸化ストレスの指標である尿中8-isoprostane量の増加,一酸化窒素依存性マーカーのニトロチロシン量の減少が認められた.以上をまとめると,カノーラ油の6週間摂取は,生活習慣病モデルとして使用したSHRSPにおいても,WKYラットにおいても,脂質酸化依存性の酸化ストレスの増加を伴った血漿脂質レベルの上昇を誘導するが,機能障害をほとんど伴わない腎傷害はSHRSPでのみ認められることが明らかとなった.また同時に,腎臓でのCOX-2およびe-NOSたんぱく発現が増大することが示唆されたが,高血圧関連疾患の進行促進へのこれらの関与についてはさらに検討が必要である.
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