2009 Fiscal Year Annual Research Report
研究評価の制度化に伴う研究活動の集中化と多様化に関する実証的研究
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19700625
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Research Institution | National Institution for Academic Degrees and University Evaluation |
Principal Investigator |
林 隆之 National Institution for Academic Degrees and University Evaluation, 評価研究部, 准教授 (30342629)
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Keywords | 研究評価 / 大学評価 / 科学計量学 |
Research Abstract |
本年度は第一に、大学の研究評価において先進国とされてきた英国、豪州、オランダなどにおいて評価システムの変容が生じている状況を分析し、大学や研究者をはじめとする多様なステークホルダーから研究評価に対していかなる批判や要請が存在しているのか、その中のいかなる意見対立が評価システムを不安定化させているかを検討した。すなわち、意見の論争が生じている原因として、1)評価目的の実質化への要請の対立、2)評価対象の範囲の設定と組織化効果の逓減、3)大学の科学研究のモデルの拡張、4)評価の参照基準、5)ピアレビューに対する方法論的批判と指標への過度の期待があげられる。これらの内容について論文としてまとめた。 第二に、Web of Scienceや日本語論文データ、ならびに国立大学の学部・研究科ごとの研究費等のデータを基にその集中化と多様化の実証的分析を行った。研究費データにおいては、日本では大学レベルの教員あたり研究費の多さと、学部・研究科単位での同指標との相関が総体的に高く、それぞれの大学内で特定の分野への拠点形成や競争力強化が実現されている状況を多く見ることはできない。論文データに基づく過去m年間の研究論文の集中度の分析からは、集中度指標が高い分野では大規模大学の占有率が高い状況が全体的にあるが、水産学や獣医学、ならびにいくつかの人文・社会科学分野では中小規模大学の占有率が高い状況があり、研究分野により異なる集中状況が存在する状況が示された。さらに、論文数が急速に増加している分野では、集中度指標は減少するが、大規模大学の占有率が上昇しているという状況がみられ、研究分野の発展が研究実施者の増加と、大規模大学による早急なキャパシティ構築という2面の展開があることが示された。同データに基づく分析については、平成22年8月に国際会議(4S/JSSTS meeting)にて発表予定である。
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Research Products
(3 results)