2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19700673
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山中 勤 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 准教授 (80304369)
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Keywords | 植物 / 生態学 / 水循環 / 水資源 / 国土保全 / 植生遷移 / 種間相互作用 / 同位体トレーサー |
Research Abstract |
同位体トレーサーを用いた吸水深度推定手法の高度化を目指し、正規分布逆解析モデルを構築し、昨年度取得した野外実測データに適用した。本モデルは、同位体シグナルが深度方向に単調変化しない場合でも有効に機能し、各試験地・各樹種の相対吸水密度プロファイルを高い信頼性をもって推定することが可能になった。また、その結果、植物種間の吸水分化の実態がより明瞭に示された。すなわち、アカマツは、単純林および菅平高原の混交林では常に深度40cm付近に吸水密度ピークを持つものの、関東平野の平地混交林ではシラカシ・アズマネザサがその深度帯の水を利用し、アカマツは深度1m以上の土層からの吸水が卓越した。一方、高原の混交林では浅根性であるはずのヤマナラシやズミが深層土壌水に依存していた。これらの事実は、植生遷移の進行に伴う種間競合が水源分化を引き起こすものの、どの種が吸水深度を変化させるかは競合相手や環境条件に依存するということを示唆していう。異種共存系の根系吸水モデルを構築し、野外調査で得られた水分条件・土壌物理特性・根系分布を入力として与えたシミュレーションを試みたところ、上記の水源分化傾向は再現できなかった。このことは、水源分化の達成において、土壌や植物根系の物理的条件よりも植物根の生理活性や機能的変化がより重要であることを意味しており、土壌-植物-大気系の水輸送モデリングの再考を促すものである。以上の結果から、「植生遷移の進行に伴う水獲得競争の発生が、特定種の根の機能的変化を通じて水源分化を引き起こす」という仮説が裏付けられたが、水源を変更する種がどのような因子によって決定されるかは未解明である。
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Research Products
(2 results)