2008 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸海底下における地下水環境評価のための水文化学的研究
Project/Area Number |
19710005
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
林 武司 Akita University, 教育文化学部, 准教授 (60431805)
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Keywords | 沿岸域 / 海水準変動 / 地下水流動 / 環境同位体 / 拡散 |
Research Abstract |
本研究では, 最終氷期以降に陸地化していない沿岸海底下の地層(中期更新世〜完新世)中の地下水の地球化学性状を明らかにし, 海水準変動による環境変化に伴う沿岸域の地下水・溶存物質の挙動の変化を理解するための基盤情報を得ることを目的として,東京港内に造成された埋立地内においてオールコアボーリングを実施して各地層の堆積環境を把握するとともに, 地下水の地球化学性状を明らかにした. その結果, 以下の成果が得られた. 海面下約50mにある中期更新世の砂礫層中に賦存する地下水の地球化学性状は, 海水の約14%の塩化物イオン濃度や腐植質・水溶性ガスの溶存, 強い還元性によって特徴づけられる. 酸素・水素安定同位体比から, この地下水は現在よりも寒冷な気候下で涵養された降水を起源とすることが明らかとなった. また, ^<14>C測定結果ならびに海水準変動に伴う当該地域の環境変動を考慮すると, この地下水は最終氷期に涵養されたものと考えられた. 一方, ボーリング調査によって得られた地質コア中の間隙水の電気伝導率の鉛直分布から, 上位にある完新世の海成層内から下位の中期更新世の地層内にかけて, 伝導率が連続的に低下していることが明らかとなった. この結果は, 完新世の地層内に賦存する地下水中の溶存物質が, 拡散によって地下深部に移行したことを示唆する. 本研究の結果は, 当該地域だけでなく東京湾内の広い範囲において, 海底面下数十mの浅部においても現世海水がほとんど浸入していないことを示唆している. この結果は, 海水準変動による環境変動に伴う沿岸域の地下水・溶存物質の挙動の変化を理解するうえで大きく寄与する。また完新世の地層内においても溶存物質の移動が確認されたことは, これらの地層の土質工学的評価(脆弱性など)にも寄与するものである.
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