2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19710015
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
鏡味 麻衣子 Toho University, 理学部, 講師 (20449250)
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Keywords | 印旛沼 / ツボカビ / 菌類 / 微生物 / DGGE / 蛍光染色 / ミジンコ / 珪藻 |
Research Abstract |
水生生物の主要な病原菌のひとつは、寄生菌類(ツボカビ)である。しかし、方法的制約からツボカビを扱った研究は未だ記載・観察にとどまっており、物質循環や食物網動態といった生態系レベルでツボカビの影響を調べた研究例は皆無に等しい。そこで本研究ではツボカビを対象に、DNAマーカーや蛍光染色法など最新技術を駆使し、野外における現存量・分布パターンの把握を試みた。 印旛沼において週1回の野外調査を行った結果、優占している珪藻.Aulacoseira granulata上に2種類のツボカビが寄生していることが確認された。また別種のAulacoseira ambiguaにも2種のツボカビが寄生している様子が認められた。さらに、緑藻類のPediastrumやScendesmusといった稀に出現する種にもツボカビが寄生している事が確認された。形態から同一種のツボカビが複数種の植物プランクトンに寄生しているのではないかと考えられた。分子生物学的手法(DGGE法、クローンライブラリー法)により約10種類のツボカビが検出された。そのうち植物プランクトンに寄生すると考えられるツボカビは2種認められ、Chytridium sp.であると推察された。これら2種が複数種の植物プランクトンに寄生しているのかもしれない。一方、他8種のツボカビについては、分解性の種類と近縁であったが、詳しい生態については明らかにはならなかった。 2006年度から2009年度までの印旛沼の試料について、珪藻Aulacoseira granulataおよびA.ambiguaに対するツボカビの寄生率を計数した。珪藻2種への寄生率は共に5月に最も高くなったが、最高でも15%未満と低く抑えられている事が明らかとなった。一方、ツボカビの1ml中の密度は胞子体としては約1800、遊走子としては18000から36000存在すると推定され、その密度は鞭毛虫など原生生物の密度を上回るほど多いことが浮かび上がってきた。印旛沼において、ツボカビは珪藻の個体群動態を強く制御するほどではないが、動物プランクトンなどの重要な餌源になっているのかもしれない。
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