2008 Fiscal Year Annual Research Report
ダブルトレーサー試験による農薬の不飽和帯水層内移行メカニズムの解明
Project/Area Number |
19710021
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
吉本 周平 National Agricultural Research Organization, 農村工学研究所・農村総合研究部・地球温暖化対策研究チーム, 研究員 (10435935)
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Keywords | ラドン吸収フィルム / 農薬 / 不飽和浸透 / カラム試験 / 湧水 |
Research Abstract |
本研究では、浸透水中に含まれるラドンと農薬をトレーサーとするダブルトレーサー試験によって、土壌から地下水面までの不飽和帯における農薬の移行メカニズムを解明するためことを目的とした。また、不飽和態の水分中のラドン濃度を把握するために、ラドン吸収フィルムを用いた新しい方法の適用性を検討した。本年度は、湧永試験および圃場実験によってフィルムのラドン吸収特性および適用性を明らかにするとともに、カラム試験によって土壌水および農薬の動態を調べた。 湧水試験では、つくば市内の湧水地点や観測用井戸にフィルムを設置し、湧水のラドン濃度と1週間漬け置いたフィルムのラドン吸収量を測定し、これらの関係を調べた。その結果、フィルムのラドン吸収量は、フィルム設置後約4日後にはほぼ平衡状態に達し、1週間後には平衡とみなせること、フィルムのラドン吸収量は試料水のラドン濃度と良好な相関関係を有することが確認された。また、圃場実験では、圃場の深さ2mの縦穴の深さ方向50cmごとにフィルムを設置して1〜3日後に回収し、フィルムの設置深度とラドン吸収量の関係を調べた。その結果、水分が浸透に従って土中のラドンを取り込んでいくことを反映して下方に設置したフィルムほどラドン吸収量が大きくなること、降雨後にはラドン吸収量が減少することが確認された。以上から、フィルムのラドン吸収特性が明らかとなり、現地に適用できることが示された。 カラム試験では、カラム内にマサを充填し、カラム内を不飽和定常状態として、フェニトロチオンをカラム上面に滴下し、カラムの下方で回収される浸透水のフェニトロチオン濃度の時間変化を調べるとともに、カラム内に設置したフィルムのラドン吸収量を測定した。今後、吸着や分解を含む農薬の土壌中での挙動を解明するためには、フィルムのラドン吸収量から土壌中での水の滞在時間を推定する方法を確立することが必要である。
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