Research Abstract |
過去の地球温暖期(MIS1,5e,11)に日本近海に運ばれた風成塵の粒径・供給源を復元し,当時の偏西風主軸の位置やその変動を調べ,温暖期における東アジア上空の偏西風の挙動とその安定性を検証することが本研究の主旨である。そこで初年度は,風成塵供給源候補地における石英特性の検討,海底堆積物試料の入手および予察的な分析を行った。 1,試料の入手 平成19年度の「かいれい」航海に非乗船研究員として参加し,日本海中部で採取された海底堆積物(KR07-12,PC5&8)を入手した。今後この試料と,平成13年のIMAGES航海において日本海南部隠岐堆から採取されたMD01-2407コア試料,平成17年のかいれい航海において日本海盆北部から採取されたPC-2コア試料とを組み合わせて,偏西風の緯度方向の変動を追う。一方,当初予定していた北太平洋のODPコアの入手は,火山噴出物等の影響がなく年代コントロールが確定しているコアの選別が困難であったため,来年度以降に持ち越された。 2,風成塵供給源候補地の特性の検討 中国の砂漠・レス試料の一部を用いて,これまで供給源地域の差別化に利用されてきた石英のESR信号(E_1'中心)強度に加え,石英中の酸素空孔の形成過程を反映するE_1'中心のピーク形や,石英中の不純物量を反映するESR信号などが供給源候補地の差別化に有効かどうかの検討を始めた。予察的な段階だが,E_1'中心のピーク形も供給源候補地の差別化に有効である可能性が示された。 3,日本海試料の予察的分析 MD01-2407コアおよび同一地点で採取されたDGC6グラピティコアのMIS1に相当する試料について,ESR分析,XRD分析,粒度分析を予察的に行った。その結果,MIS1において,数千年毎に偏西風主軸の位置が変動したことを示唆する結果が得られた。この結果は,温暖期における東アジアの気候安定性/不安定性を検証する上で重要である。来年度以降は,緯度トランセクトコア試料を利用し,他の温暖期についても偏西風主軸の位置やその変動について詳しく調べる予定である。
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