2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19710026
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
長島 佳菜 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 地球環境変動領域, 研究員 (90426289)
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Keywords | 気候変動 / 地球温暖化 / アジアモンスーン / 古気候 / 古海洋 / 偏西風 |
Research Abstract |
東アジア縁辺海および北太平洋において、南北トランセクトで採取された海底堆積物に含まれる風成塵の粒径の測定と供給源の推定を行い、過去の温暖期における偏西風主軸・蛇行度の変動を調べ、東アジアの気候安定性を検証することが本研究の目的である。 本年度は、太平洋で採取されたコアのコアトップ試料の分析と、日本海の中部および南西部から採取されたコアのMIS 5に相当する試料の分析を行った。北太平洋のコア試料は、分析に必要な量を確保するため、当初の予定であったODPコアではなくみらい航海で採取されたコア試料(MR00K05 PL-1,PL-2,MR01K02 PL-1,MR02K03 PL-1,PL-3)を用いた。 1. 太平洋コアを用いた分析 北太平洋から緯度トランセクトで採取されたコアのコアトップ試料を用いて、試料中に含まれる様々なサイズの石英の電子スピン共鳴(ESR)分析、XRD分析を行い、風成塵がどのサイズフラクションに含まれているのか検証を行った。その結果、0-4μmのESR信号強度が他のフラクションに比べて高く、風成塵を多く含むことを分かった。そこで、今後は過去の温暖期に相当する試料について0-4μmの粒子を抽出して分析を進める。 2. 日本海南北トランセクトコアを用いた分析 コア試料に含まれる石英について、ESR-XRD分析を行い、その値から、MIS 5に飛来した風成塵の供給源の推定とその変動を明らかにした。その結果、MIS 5における風成塵の供給源は、タクラマカン砂漠とゴビ砂漠の間で数千年毎に変動することが示された。この結果は、過去の温暖期であるMIS 5において、偏西風ジェットの軸が南北にシフトしたことを示唆する。これまでの研究で明らかになった、後氷期に繰り返した偏西風ジェットの北上イベントと同様のイベントが、MIS 5にも起こっていた可能性が高い。これらの結果は、偏西風・アジアモンスーンに代表される東アジアの大気循環、特に子午面循環が千年スケールで変動していることを示唆し、聞氷期における東アジアの大気循環の不安定性を示している。
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