2009 Fiscal Year Annual Research Report
非意図的な移入魚種による生態系撹乱機構:弱小移入種は多様性を下げるのか
Project/Area Number |
19710029
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
斎藤 裕美 Tokai University, 生物理工学部, 講師 (50433454)
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Keywords | 外来種 / 湖沼 / 生態系 / 底生動物群集 / 資源競争 / 沿岸域 / ヌマチチブ / 水生昆虫 |
Research Abstract |
本研究は支笏湖における小型移入魚種(ヌマチチブ)が沿岸域の生態系に与える影響を調査する目的でおこなった。過去2年間の調査研究のデータ分析は大部分を終えているので,本年度は研究についての考察ならびに追加分析について報告する。従来の結果より,小型移入魚種(おもにヌマチチブ)は,沿岸の生態系の生産者である藻類を餌資源として利用し,藻類を餌資源ならびに生息場所として利用するユスリカ等の無脊椎動物の個体数・現存量を激減させ,その結果,底生無脊椎動物の群集構造を大きく変化させ,生態系に影響を与えている可能性が高い事を明らかにした。このような小型移入魚種の研究例は国内では少ないものの,国外では,カスピ海や日本からタンカーのバラスト水に運ばれたハゼ類の幼魚が広範囲に定着し,北米(主に五大湖)や北欧において問題視されている。しかし,このような研究においても分布調査が多数を占め,具体的に移入種が生態系に与える影響を調べた研究は稀である。本研究では,野外でエンクロージャーを用いて,生態系に与える影響を明らかにする事に成功し,国内外においても意義のある成果を示せた。さらに,支笏湖に生息する小型移入魚の食物網での地位を調べると,ヌマチチブなどのハゼ類は藻類食者に位置し,湖内の他の藻類食者の強力な競争者である事が明確になった。ただし,他のイトヨ,フクドジョウ,ウグイの小型移入種は底生動物食が多かった。また,冬期(12月と2月)に魚類採集をおこなった所,小型移入種は殆ど採集されなかった。これから,小型移入種は生息場が季節的変動を示し,同所的な生息場を利用しても種毎に食性を変えるため,種によって生態系での影響を与える栄養段階が異なるので,生態系でのこれらの影響は複雑であると考えられる。
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