2008 Fiscal Year Annual Research Report
島嶼における生物多様性保全のための侵入種リスク対策に関する研究
Project/Area Number |
19710032
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
郡 麻里 National Institute for Environmental Studies, 環境リスク研究センター, NIESポスドクフェロー (10446388)
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Keywords | 環境政策 / 外来種 / 生物多様性保全 / 環境ベースマップ / 地理情報システム / 特定外来生物 / キョン / 森林更新阻害 |
Research Abstract |
外来種の蔓延している島嶼地域、特に伊豆諸島の大島と八丈島をモデルとして、環境省が指定した特定外来生物の在来生態系に及ぼす影響について、動物側と植物側両方の視点から定量的に調査し、駆除・管理のための根拠と事例とするための評価手法の開発を試みた。植生型や土地利用形態、地形等の特徴から固有種や絶滅危惧種など保全すべき対象となる生物群が多く分布する生息ハビタットを地理情報システム(GIS)を用いて抽出し、去年度作成した外来種分布状況図とオーバーレイすることにより、重点的な保全対策候補地(防除検討エリア)の環境ベースマップを作成した。この地域内において、H20年度は特定外来生物キョン(シカ科)による林床植生の食害の実態を調査した。食害が顕著な島の東部、および比較的影響の及んでいない島西部の森林の林床植生の構造および組成を比較した結果、島東部のキョン定着下では偏った樹種の稚樹が食害にあう傾向にあった。極相林を構成するタブノキやスダジイの稚樹はほとんど消失している一方で、シロダモやマンリョウといった鳥散布型の二次林タイプの稚樹が多く見られた。特にスダジイ壮齢群落においては、ナギランなど希少植物を含む17種類以上の稚樹や草本が食害にあっていた。さらに、島西部のスダジイ林で見られる萌芽枝(ひこばえ)も、島東部のキョンの多い地域では地上部付近ではほぼ皆無となっており、キョンによる食害は林床の稚樹の更新や次世代後継樹の生育を著しく阻害していることが判った。なお、東京都大島公園事務所および地元猟師1名に対しても外来生物の生息状況および保護管理体制についてヒアリングを行い、今回の保全対策のエリア選定の参考とした。この内容は第56回日本生態学会大会において発表し、房総半島でのキョンの定着事例と比較するための基礎情報としても貢献できた。
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Research Products
(1 results)