2008 Fiscal Year Annual Research Report
サステイナビリティ条件の経済学的定式化とその実践における環境評価手法の統合的研究
Project/Area Number |
19710041
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 真行 Kyoto University, フィールド科学教育研究センター, 研究員(特任准教授) (10437254)
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Keywords | サステイナビリティ / 環境評価 / 消費者選好 / 計量経済分析 / 富 / 福祉 / ジェニュイン・セイビング / 成長経路 |
Research Abstract |
本年度は、ジェニュイン・セイビング(以下GS)を用いた持続可能性の測定と分析を進めた。第一に、時系列に沿った経路の形状を分析した。従来、GSの研究対象年(過去数十年)平均でもって持続可能性が議論されることの多かったが、本研究では、経路の形の違いを考慮に入れる必要性に着目した。世界銀行のデータベースWorld Development Indicatorsから、可能なすべての国の経路を観察し、実に様々な経路があるにもかかわらず平均に着目することによりそうした情報が失われていることを指摘した。そして、評価軸として、トレンドと分散という二つの側面を含めた分析枠組みを構築した。これにより、たとえ平均が同じであっても、上昇傾向にあるか否か、安定性が高いか否かといった観点からの分析がなされた。第二に、過去20年間のデータに基づいて、将来50年間の数値シミュレーションを行い、最初に持続可能性条件が破綻するまでの期待年数、および50年間持続可能性条件を満足させ続ける確率を計算した。そして、定常状態の数値とあわせて、代表的な先行研究であるHamilton and Clemens(1999)およびArrow et al.(2004)との比較を行い、先行2研究で持続可能と判断された国についても、そのトレンドや不安定性から無視できない確率で持続不可能と判断すべき国があることが示された。こうした研究により、これまでの富あるいはGSによる持続可能性分析をより発展させ、具体的な数値として示すことができた。第三に、国民国家だけでなく、国家の集合としての地域、あるいは所得水準による分類、資源保有による分類など、様々な分析単位で考察した。これにより、そうした特性が持続可能性指標としてのGSにどのように現れているのかを分析した。 そのほかの成果として、GSデータでは環境資本の計算価格には近似的に市場価格などが用いられているが、環境評価手法で得られる値に置き換えたときにどの程度結果が変化しうるかを予想するために、計算価格の感度分析を行い、初期結果を得た。
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Research Products
(5 results)