2010 Fiscal Year Annual Research Report
獣害問題における被害意識の多様化プロセスの解明と包括的軋轢軽減モデルの構築
Project/Area Number |
19710043
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
鈴木 克哉 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 助教 (80447896)
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Keywords | 野生動物管理 / 被害管理 / ヒューマンディメンジョン / 被害意識 / 軋轢管理 |
Research Abstract |
本研究では、さまざまな社会・文化的条件のもと発生している獣害問題を対象に、農家の被害意識構造を解明し、それらを地域比較することで食害という生物学的現象に対して地域住民の被害意識が多様化する社会的要因を明らかにすることを目的としている。今年度は、兵庫県において「獣害に強い集落づくり」取り組み支援を行っている5集落を対象に意識調査を行い、共分散構造分析により、獣害に対する問題許容性に影響を与えている要因の定量的な把握を試みた。その結果、被害農家の「問題許容性」に対して、「被害への近接性(被害を受けた時期)」が強い負の影響を与えていることが明らかになった。今回の分析では有意な結果とならなかったが、「被害頻度」「支援満足度」が与える影響も大きい傾向にあった。また、被害農家の「支援満足度」に対しては、「相談相手の欠如」が強い負の影響を与えてしいることが明らかになった。聞き取りによる質的調査から、日常、被害を許容する発言をする農家でも、(1)被害発生直後、または(2)被害を共有しない相手に対し、被害を拒絶する発言をする傾向にあることが明らかになっている。今回の分析結果からも、問題許容性を高めるためには、被害発生直後に高まる「被害感情」をいかに解消できるかが、重要といえる。また、獣害に対する「相談相手」の存在は「支援満足度」を高める効果も期待でき、問題許容性の向上に寄与する可能性もある。
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