2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19710078
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 理尚 Kyoto University, 化学研究所, 助教 (30447932)
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Keywords | フラーレン / 内包フラーレン / 水素内包フラーレン / 水素分子 / 水素吸蔵 / 熱力学的パラメータ / [4+2]環化付加反応 / 9, 10-ジメチルアントラセン |
Research Abstract |
フラーレンの内部空間に金属あるいは希ガス原子が導入されると、空の場合とは異なる反応性を示すことが知られている。しかし、アーク放電や極端な高温・高圧条件を要する既存の製造法では、内包フラーレン自体の生成量が僅少であるため、十分な研究はなされていない。一方、我々は分子手術法とも呼ばれる手法を開発し、フラーレン骨格内に水素分子を100%導入することに初めて成功した。本研究では、フラーレンと水素分子との相互作用がフラーレンの反応性にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、水素内包C_<70>の付加反応を検討した。 水素分子を1個あるいは2個内包したフラーレン(H_2)_2@C_<70>およびH_2@C_<70>と、9,10-ジメチルアントラセン(DMA)との[4+2]環化付加反応を1,2-ジクロロベンゼン-d_4中で行い、得られた平衡混合物の^1HNMRを測定した。その結果、新たに生成した付加体DMA-(H_2)_2@C_<70>およびDMA-H_2@C_<70>の内包水素が-21.80および-22.22ppmに観測され、未反応の(H_2)_2@C_<70>(-23.80ppm)およびH_2@C_<70>(-23, 97ppm)のものより低磁場にシフトした。これらのシグナル強度比ならびに^1HNMRより見積もった未反応DMAの濃度から、30,40,50℃での平衡定数K_1およびK_2を算出し、ファントホッフの式より自由エネルギー変化ΔG_1およびΔG_2をそれぞれ決定した。その結果、K_2はK_1より約15〜19%小さいことがわかった。すなわち、内包水素分子の個数により付加反応の熱力学的パラメータが変化することが明らかとなった。
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