2007 Fiscal Year Annual Research Report
血管新生阻害活性を有するコルチスタチンの全合成・作用機構の解明
Project/Area Number |
19710175
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 修治 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (50419991)
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Keywords | コルチスタチン / 血管新生阻害 / 抗腫瘍活性 / 収束的合成 / 電子環状反応 / ラジカル反応 / Knoevenagel反応 / 連続四置換炭素 |
Research Abstract |
成人の場合、血管新生は、ケガをしてその傷が治るときや女性の子宮内で周期的に起こる。しかし、血管新生が異常に活発になる部分があり、その一つが固形ガンである。固形ガンは大きくなるにつれて、酸素や栄養の確保のために近傍の血管から新たに血管を誘引し、増殖や転移を繰り返すことがわかっている。血管新生が阻害されれば、ガン細胞はアポトーシスを起こし、結果的にガン細胞は小さくなるため、血管新生を特異的に阻害する活性物質が新規抗ガン剤として注目され、現在盛んに研究がなされている。コルチスタチン類は2006年、小林らによって海綿Corticium simplexから単離された新規ステロイドアルカロイドである。コルチスタチンA(1)は、血管新生過程で必須である血管内皮細胞(HUVECs)の増殖を強力に阻害(IC_<50>=1.8nM)すると報告された。1の血管内皮細胞に対する増殖阻害活性は、各種培養細胞と比較して3000倍以上の選択性を示すため、副作用のない抗血管新生剤として世界中の研究者の注目を集あている。今年度は、研究課題全体の基盤となる血管新生阻害剤コルチスタチンAの全合成研究を遂行した。その結果、コルチスタチン類基本骨格の合成を出発原料から、僅か14工程で達成できた。これは、コルチスタチン最大の特徴である隣接四置換炭素を含むオキサビシクロ[3.2.1]オクテン構造を、電子環状反応と続くラジカル反応により合成した世界で初めての例であり、全合成における最難関課題を克服したものである。残る課題は、イソキノリン構造の導入と官能基変換のみである。また、今年度合成法を確立した骨格はコルチスタチン単純化アナログの創製における土台構造となるため、来年度に計画していた構造活性相関研究、およびそれを基盤とした受容体蛋白質探索のための分子プローブ調整の準備は整ったといえる。
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