2007 Fiscal Year Annual Research Report
生体調節機能を司るキノコ由来多環式天然物の全合成研究
Project/Area Number |
19710189
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小林 正治 Osaka Prefecture University, 理学系研究科, 助教 (30374903)
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Keywords | シアタン / エリナシン / 天然物 / 全合成 / 多環式 / Puimnerer反応 / 立体選択的 / メタセシス |
Research Abstract |
キノコから単離されたシアタン系天然物は,ニューロトロフィンファミリー[神経成長因子(NGF)や脳由来神経栄養因子などのタンパク質]の合成を促進するため,アルツハイマー型痴呆症やパーキンソン病などの難治性神経疾患の予防薬や治療薬として期待されている。本年は,シアタン系天然物の中でも最も構造が複雑なエリナシンEの全合成を検討した。 エリナシンEは六環性化合物であり10個の不斉点が存在する。更に,DEF環は高度に酸素官能基化されている。我々は天然物の全合成だけでなく様々な類縁体合成を視野に入れ,AB環とE環を中央のC環部で連結する収束的な合成法を考えた。まず,本戦略の実現性を確かめるため,B環とE環の連結反応を検討した。その結果,ビニル金属種を用いたアルデヒドへの付加反応により,立体選択的に結合形成が行えることを見出した。反応点に近接する水酸基の保護基が立体選択性に大きく影響を与えることがわかった。 次に,CDEF環部の合成に向けて,高度に酸素官能基化されたE環の合成を検討した。安価なD-マンノースを出発基質として用い,立体選択的ラジカル環化反応とエポキシ化反応を鍵工程として効率的にE環を構築することに成功した。特筆すべきは,水酸基の保護基が適切に区別されているため,以後の構造変換が容易なことである。続いて,エリナシンEに特徴的なヒドロイソベンゾフラン環(DE環)の構築を検討したところ,δ-ヒドロキシスルホキシドを用いたPummerer型反応により,環構築が行えることを見出した。更に,閉環メタセシス反応によるC環の形成にも成功し,三環性化合物(CDE環部)を合成することに成功した。本研究成果は,エリナシン類の全合成や類縁体合成に有用である。
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