2008 Fiscal Year Annual Research Report
生体調節機能を司るキノコ由来多環式天然物の全合成研究
Project/Area Number |
19710189
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小林 正治 Osaka Prefecture University, 理学系研究科, 助教 (30374903)
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Keywords | 神経成長因子 / 全合成 / 天然物 / ヘリセノン / エリナシン / アセタール / Pummerer反応 / 実用合成 |
Research Abstract |
初年度の研究で、キノコ由来の神経成長因子(NGF)産生促進物質エリナシンEのCDE環骨格の構築に成功した。本年度は引き続いてエリナシンEの不斉全合成に向けて、CDEF環部とAB環部の不斉合成を検討した。 5-6-6員環が縮環するCDF環骨格を構築する上で重要となるのが、O, S-アセタールに対する分子内アセタール化反応である。このようなアセタール化を用いて縮環骨格を構築する方法はこれまでほとんど検討されておらず、アセタール結合を含む多環性化合物の強力な合成方法論となりうる。まず、DE環を有する二環性のケトンからF環に相当する炭素鎖をTMSCNを用いて立体選択的に導入し、二段階の還元過程を経て環化前駆体を合成した。NCSを活性化剤として環化反応を試みたが環化体は得られず複雑な混合物となった。環化前駆体のデータを詳細に解析したところ、分子構造の立体的な制限により、結合すべき炭素-酸素原子問距離が遠ざかっていることが示唆された。現在、C環を前もって構築することにより結合点を近づけ、環化させることを検討している。一方、C環とD環の構築方法についてもピナコール型環化反応やエチルスルポキシドを用いたPummerer型環化反応による改良法を検討したが、良好な結果は得られなかった。 次に、AB環部の不斉合成を検討したところ、AB環接合部の四級炭素の構築には不斉Michael反応が有効であることがわかった。分子内Aldol反応を経て光学活性なAB環部の実用合成に成功した。現在、AB環とE環のカップリング方法を検討している。 また、エリナシン類と同様にNGF合成促進活性を持つヘリセノン類の実用合成法に関する有望な知見を得ることができた。当初の目標であった天然物の全合成までたどり着いていないが、本研究成果は多環式天然物の新しい合成方法論の開拓に資するものである。
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