2009 Fiscal Year Annual Research Report
ラオスの水田景観における植物多様性保全に関する研究
Project/Area Number |
19710199
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
小坂 康之 Research Institute for Humanity and Nature, 研究部, プロジェクト研究員 (70444487)
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Keywords | 水田植生 / 植物資源管理 / 国際情報交換 / ラオス |
Research Abstract |
本研究の目的は、ラオスの農村における水田とその周囲の景観において、植物相の記載、住民の植物利用や管理法の記録、種多様性が維持されているメカニズムの推定を行い、その結果をもとに地域に適した植物資源管理の方法を考察することである。 平成21年度には、ラオス中部と北部において、水田と畑地の野生草本植物のインベントリー作成と、住民による野生植物の利用・管理法の記録を行った。その結果、農耕地に生育する野生草本植物のうち、利用されない種は根茎ごと引き抜かれるか、あるいは土の中に埋め込まれていた。一方、食用となる種は新芽だけが摘み取られ、再生可能な状態で残されていることが明らかとなった。そのため、住民による選択的な管理が、農耕地において有用な野生草本植物の生育を促していることが推察された。そして、野生草本植物が食用とされる場合、複数の種が混ぜて食用とされることが多いことも特徴であることがわかった。また比較研究として、インド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州の水田景観の植生調査を行ったところ、ラオス北部や日本と同様に、セリやハハコグサ、ツボクサ、ドクダミが生育し、食用として利用されていることが明らかとなった。これらの結果は、アジアの水田景観において、人々の管理のもとで、有用な野生草本植物が優占する植物相が形成されていることが示唆された。さらに、水田景観において、生育力の旺盛な帰化植物が侵入する事例が多く確認されたことから、従来の植生への影響が懸念された。 これらの知見は、平成22年度に、学術雑誌への投稿論文としてまとめられる予定である。
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