2007 Fiscal Year Annual Research Report
近現代北アメリカにおける「華僑アイデンティティ」形成の史的再検証
Project/Area Number |
19710215
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
園田 節子 Kobe Women's University, 文学部, 准教授 (60367133)
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Keywords | 東洋史 / 華僑・華人史 / アイデンティティ / 米中関係 / コミュニティ / 移民 |
Research Abstract |
本年度はプロジェクトの開始にあたり、一次史料と二次資料の網羅的な調査と収集を重点的におこなった。中国の域外で華僑が対応・選択・決定をする意思の総体や回路として「華僑アイデンティティ」を捉え、そのはじまりを理解するには、20世紀初頭の実態を把握することが最も重要である。これを具体的に説明するため、1905年反米ボイコット・1911年辛亥革命・1925年孫文の死、これらの事件前後におけるサンフランシスコ華僑の言説や視点の変化を調査した。 夏期にサンフランシスコで現地の大学付属図書館や資料館、博物館でサンフランシスコ華僑の複数の新聞の時事論説・一面ニュース・華僑コミュニティ向けの記事・告知を収集した。アメリカの華僑研究や中国系アメリカ人研究の二次文献については、アイデンティティに関する最新の研究を集め、研究潮流を押さえることができた。従来華僑関連書籍の出版そのものが寡少であった中国も、昨今急激に変化していた。このため、台湾・香港・広東省広州市では北米移民送出地域の地方史の最新の成果を押さえようと、新たに出版されていた旧香山県地方史や会党・幇、そして20世紀全般の華僑に関する方面の史料集ならびに研究書を渉猟した。東京の外交資料館では、1905年反米ボイコットに関する一次史料として、簿冊史料を調査した。 本年度の基礎的調査の結果、まず20世紀初頭のサンフランシスコ華僑社会では出身地アイデンティティが前提である一方、同郷人の居住する地理的広がりを強く認識し、広東省から中米まで達する世界的視野を持っていたことを実証できた。これが本国中国で起こったどの事件でどのように変化した結果、「華僑アイデンティティ」から見る視座が生まれたかという、画期の設定についても議論が可能になった。こうした分析・議論は、来年度前半に、国内の学会年次大会および研究会にて口頭発表する。
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