2009 Fiscal Year Annual Research Report
女性由来組織をめぐるポリティクスとジェンダー-女性の痛みとリスクに焦点をあてて-
Project/Area Number |
19710219
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
日比野 由利 Kanazawa University, 医学部, 助教 (40362008)
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Keywords | 生殖補助医療 / 卵子提供 / 資源化 / ポリティクス / 女性保護 |
Research Abstract |
女性が提供者(ドナー)となる医科学技術における女性保護について考察するために、不妊治療の卵子提供に関する医学・疫学論文を検討した。不妊治療における卵子提供は、卵子の老化に対する有効な治療法であり、卵子の提供を受けることができれば、出産年齢を過ぎた女性でも出産可能である。米国では有償での提供が認められており、生殖補助医療の全サイクルの14%程度が卵子提供によって行われている(2007)が、ドナーは不足している。日本では、匿名他者からの無償提供が認められているものの、ドナーの確保は事実上困難な状況となっている。そのため、海外で提供を受ける患者も存在する。一定数の論文があり、有償匿名での卵子提供が行われている米国のドナー追跡調査を検討した。ほとんどの研究において、大多数の卵子ドナーが、卵子提供の経験に満足しているという結果であった。ドナーの属性については、中産階級で、心理的にも健康な女性であり、卵子提供の動機としては、愛他的(altruistic)であることが強調されていた。しかし実際にはローンや学費の支払いなどの金銭的動機も存在し、報酬が伴わなければ提供を行わないとした女性が大多数であった。米国の卵子ドナー女性の追跡調査研究のほとんどが、回収率が低く(50%未満)、選択バイアスが掛っていると考えられた。また繰り返し提供者も少なからず含まれていること、そしてドナー候補者は心理検査等を実施し予めセレクションされていること、などから、満足度が高い対象者に偏りが生じている可能性が高いことが指摘できる。今後、出産年齢の高齢化が進むに従って、卵子提供による治療は、ますます増えていく可能性がある。国内外のエビデンスの検証を十分に行い、卵子ドナー女性の権利擁護や保護について、リスクを過小評価することなく検討していく必要性があることが示唆された。
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Research Products
(9 results)