2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本の性的マイノリティにおける名づけと自己表象をめぐる文化分析と理論構築
Project/Area Number |
19710222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 晶子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (40361589)
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Keywords | フェミニズム / クィア / 自己表象 / 日本 / 性的マイノリティ |
Research Abstract |
1. クィアなパフォーマンスの政治的可能性をめぐる学会発表 2009 IACS Tokyo Conference, 'Cultural Studies and Asia, Past, Present and Future'学会発表(2009/7/5東京外大)、'Queering of the Reproductive Time-line' いわゆる性的マイノリティコミュニティのアイデンティティの政治に基づく自己表象とは異なる、一見したところ「性的マイノリティ表象」とはみなされない芸術作品における自己表象戦略のクィアな可能性を、やなぎみわの写真作品の分析を通じて模索する。とりわけ、やなぎ作品におけるクィアな時間のあり方、特に世代の継承と過去・未来とのかかわりの中での現在の「自己」の表象に注目し、それが現在の日本において性的マイノリティの生を管理・統制する一つの権力のあり方に対するオルタナティブを提唱していることを指摘する。 2. グローバル・クィアと同性婚要請運動における自己表象についての学会発表 World Outgames 2nd Conference on International LGBT Human Rights学会発表(2009/7/29 ITU) 'My Future Grandmothers: Imagining Queer Generations in Japan'。 グローバルなクィア・ムーブメントがローカルな文脈へと移植されるにあたってナショナリスティックな同一性の論理と共犯関係を結ぶ危険を指摘し、それに対抗しうるクィアな自己表象の戦略の可能性を考える。 具体的には、日本の過去20年間にわたる「少子化対策政策」の関連文書の分析をもとに、人口および再生産管理統制がナショナリスティックな同一性の論理に基づく点を確認した上で、宗教的な口実を持つ同性愛嫌悪が顕著な欧米における同性婚要請運動とは異なり、現状での日本における同性婚要請は、このような再生産管理と同一性の論理とに比較的矛盾なく接合され、結果としてクィアな連帯を損なう可能性がある事を指摘する。
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