2007 Fiscal Year Annual Research Report
カント批判哲学における「ミスティシズム」概念の形成をめぐる哲学史的・人間学的研究
Project/Area Number |
19720005
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
山根 雄一郎 Daito Bunka University, 法学部, 准教授 (50338612)
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Keywords | カント / 近世哲学 / 平和論 |
Research Abstract |
本研究は、哲学史的関心に基づく部分と、(特殊カント的意味での)人間学的関心に基づく部分とからなる。 平成19年度は、哲学史的関心に基づく部分に関しては、次年度以後に本格的に研究を遂行するための基盤整備に向けて、2回にわたりドイツ連邦共合国に渡航し、所要の研究活動を行った。 平成19年10月7日より14日までの渡独では、メクレンブルク・フォアポンメルン州グライフスヴァルトにて行われた国際専門学会「カントとヨーロッパ啓蒙の未来」(10月-13日)に出席し、研究者と意見交換を行った。この会議への参加途上、ベルリン国立図書館にて資料調査を試みたが、時間不足のため、再度の渡独時に持ち越さざるを得なかった。 平成20年2月19日より29日までの渡独では、同図書館にて、国内図書館に所蔵のない歴史的文献を中心に、集中的な資料収集を行った。また、ヴッバータール大学哲学科(当時)のハイナー・クレンメ教授と研究上の意見交換を行った。 次に、人間学的関心に基づく部分に関しては、アカデミー版カント全集所収「人間学」関係テキストの分析を進め、その成果の一端を、論文「平和の形而上学-『永遠平和のために』の批判哲学的基底」(坂部惠・佐藤康邦編『カント哲学のアクチュアリティー哲学の原点を求めて』ナカニシヤ出版、所収)の主として第5節の論述や、同時代の少壮哲学者トマス・アプトの思想に対するカントの態度をめぐる注記の記述などに、反映させた。ミスティシズムを乗り越えたリアリスティックなカントの平和構想のもつ基本性格の一側面を具体的に示し得たと考える。
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